その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 ドレスショップを出て、夜はレストランで外食をしたあとマンションへと帰ってきた。

 (まさか、こんなふうに二人でドレスを選んだりするなんて思わなかったな…)

 まだどこか夢の中の出来事みたいな気がする。そんなふわふわとした心地に浸っていたとき、テーブルに置いたスマートフォンが震えた。画面を見ると、祖母からの着信だった。

 「もしもし、おばあちゃん?」
 『ああ澪。いま大丈夫かい?』
 「うん。どうかしたの?」

 結婚してからもちょくちょく電話はしていたけれど、こんな時間にかかってくるのは初めてのことだった。

 『実は昨日の夕方に、ひよりの実母の代理人弁護士って人から、内容証明の郵便が届いててね……』
 「……え?」

 澪はハッと息をのむ。

 『中身は難しくて私にはよく分からないんだけど、お金のことも書いてあるみたいで…』
 「わかった。明日の仕事帰りにそっちに寄るから。おばあちゃんは気にしないで、何もせずそのままにしておいて」
 『ごめんね、結婚したばかりなのにこんなことで』
 「ううん、連絡してくれてありがとう。おばあちゃんは何も心配しないで」

 電話を切ったあと、澪はしばらくその場に立ち尽くしていた。さっきまで穏やかな夢見心地の空気が一変してしまったように感じて、背筋が寒くなる。

 (……ついに、動いてきたんだ)

 澪は手の中のスマートフォンをぎゅっと握りしめた。

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