その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
「隠すなと言っただろ」

 (……え?)

 抱きしめられている。
 そう気づいて目を見開く澪に、真澄は迷いのない声で続けた。

 「どうしてもっと頼らない?そのために結婚したんだろう。だったら、もっと俺をうまく使えばいい」

 腕を少し緩めた真澄が、指先で澪の頬をなぞる。

 「俺は、澪の夫なんだから」

 どうしてそんなふうに言えるの。
 どうして、そんな目で見つめてくるの。

 「心配しなくていい」

 もう一度、今度は背中に腕が回されて強く抱き寄せられる。
 あたたかい――呼吸の音も、鼓動の気配も、全部、すぐそばにある。澪は戸惑いながらも、真澄の胸元に身を預けていた。

 「澪も――澪の家族も、俺が守る」

 耳元に落とされたその声は優しくて、何よりまっすぐだった。

 (こんなの反則ですって……)

 優しく撫でるような手に包まれて、澪はすべてを委ねるようにそっと目を閉じる。
 胸の奥で張り詰めていた何かが静かに、確かに――ほどけていった。

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