その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 ◇◇◇◇

 一週間後の土曜の午後。

 真澄と澪がリビングでコーヒーを飲んでいると、澪のスマートフォンに仁科から着信があった。澪はすぐにスピーカーモードに切り替えて電話に出る。

 「例の件に動きがあった。向こうの弁護士から話し合いの場を設けたいって打診が来てる」

 電話の向こう、仁科の声は相変わらず冷静だった。

 「え……どうしたらいいんでしょうか……?」

 澪の声がわずかに揺れる。不安を察してか、真澄はそっと手を取った。

 「たぶん、こっちが弁護士を立てたことで向こうが焦ってる。こっちの反証資料も十分に揃ってるし、このタイミングで一気に片付けるのも悪くない」

 仁科の声は淡々と告げてくる。

 「……でも、私がちゃんと話せるかどうか……」
 「俺が隣りにいるから心配するな。それに、もしこれ以上脅そうとする気なら俺が正面から叩き潰すだけだ」
 「まあ、お前ならそう言うと思ったけど」

 仁科が苦笑混じりに返す。

 「じゃ、日程と会場は調整しとくよ。澪さん、真澄がこう言ってるし安心してまかせちゃいな?」

 電話が切れたあと、リビングに静けさが戻る。

 「なにか、温かいものでも入れるか」

 真澄が立ち上がるとキッチンへ向かう。その背中に、澪もすぐに続いた。

 「私も手伝います」
 「いい。座って――」
 「……いえ。なにかしてないと、落ち着かないんです」

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