その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 真澄はそれ以上何も言わずに、ケトルに水を入れてコンロに火をつける。
 二人並んで湯を沸くのを黙って見つめていた。

 「今回のことは全部俺と仁科にまかせればいい。向こうの代理人はまともじゃなさそうだし、これ以上澪が無理して矢面に立つ必要はない」

 その優しさはありがたかった。けれど、澪はゆっくりと首を振る。

 「ちゃんと自分の言葉で伝えたいんです」

 相手の目的が本当にひよりの親権なのかお金なのか、自分には判断できない。でも、たとえどんな理由だったとしても、私たちがひよりの手を離すことはない。誰にどう言われても守るつもりだ。

 「私たちが、どれだけひよりのことが大事か分かってもらいたいんです」

 「……分かった。じゃあ俺は、澪がちゃんと支えて守れるようにする」

 自分の隣りには、そばにいて支えてくる手がある。
 それだけで、澪は少しだけ深く息をつくことができた。

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