その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 「あの、お二人は長いお付き合いなんですか?」
 「そうそう。幼稚園のときからだから……三十年?」
 「そんな昔から!?」

 驚く澪の横で、真澄がわずかに眉をひそめる。

 「余計なことを言うな」
 「ほら出た。お前、昔っからそうやって嫌なことはすぐ顔に出るんだよ」

 仁科はお構いなしにけらけらと笑う。

 「真澄はお坊ちゃんで、そのころからいけ好かなかったけどな〜」
 「いけ好かないってなんだ」
 「スモック着て砂場で直立不動ですかしてる幼稚園児なんて、お前くらいだったっつーの」
 「お前もう帰れ」

 すっかり仁科にやり込められているその様子がおかしくて、澪も笑ってしまった。

 「それでも不思議と気が合ったんだよね。まぁそういうわけで、真澄の大事な人のことなら俺も全力でやるから安心して?あ、そうだ――」

 立ち上がって玄関へと向かう仁科が、にやりと笑って澪にだけ聞こえるように軽く顔を寄せる。

 「あんまり無理して背負いすぎないこと。あいつ、案外そういうの見てるもんだから」
 「あ、はい……」

 それは実感している。真澄の前ではどんなに取り繕うとしても、すべて見透かされてしまうこと。

 澪がぺこりと頭を下げると、仁科は満足そうに手を振って部屋をあとにした。

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