その天才外科医は甘すぎる～契約結婚のはずが溺愛されています
　チェックインを終えて案内された部屋の扉が開いた瞬間、澪は思わず小さく声を漏らした。

　「……わ」

　重厚なドアの向こうに広がっていたのは、まるで映画のワンシーンのような世界。

　深い紺とグレーで統一されたインテリア。窓際には高級感のあるファブリックに包まれたソファとテーブル。壁にはシックなアートパネルが飾られ、まるで“ホテルの一室”というより高級マンションのリビングのような雰囲気。

　そして、リビングルームの奥。
　ベッドルームを覗いた瞬間、視線が釘付けになった。

　そこには、キングサイズのベッドがひとつ。

　「……あの」

　小さく澪が口を開いた瞬間、真澄も視線を向けて、ほんの一拍の間を置いて言った。

　「ああ、悪い。ツインって指定しておくの……忘れてた」

　その言葉に嘘はなかった。
　珍しく、口元に手を当てるような仕草――あの冷静な真澄が、少しだけ動揺しているのが分かる。

　部屋の中心に堂々と鎮座するキングサイズベッド。しわひとつないシーツと、厚みのあるピローが妙に存在感を放っている。そして数秒の間を置いてから、少しだけ真面目な声色で続けた。

　「……変更してもらおうか？もしかしたら、ツインルームに空きがあるかもしれない。今からフロントに聞いてみる」

　え、と目を見開いた澪は、思わず慌てて首を振った。

　
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