その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 ◇◇◇◇

 そしてむかえた翌日。
 ボストン中心部にそびえるコンベンションセンターの前に真澄と並び立ったとき、澪はあらためてその規模に息をのんだ。

 外観はガラス張りで、どこまでも高く広い吹き抜け。各国から訪れた医療従事者たちが出入りし、英語をはじめとしたさまざまな言語が飛び交っている。

 「これが澪の分だ」

 受付を終えた真澄が澪に渡してきたのは、一枚のストラップ付きパス。

 「……私の?」
 「当然だ。澪も正式な参加者なんだから」

 手元のパスには、確かに“Hiiragi MIO”の名前と“Spouse”の記載。さらりと告げられたその言葉に、澪はまじまじと見つめてしまう。

 (……本当に『柊木真澄の妻』として、この場にいるんだ)

 会場内に入ると、さらに圧倒された。英語と笑い声が入り混じる会場の一角で、澪は真澄の隣りに控えるように立っていた。

 招待者専用の立食形式のレセプションでは、真澄のもとに、次々と世界中の医師や研究者が挨拶にやってくる。

 「あの人は欧州神経血管学会の名誉教授ですよ」

 そう教えてくれたのは現地の日本人コーディネーターの女性だ。ボストンの医療機関に長年勤務していた経験もあって、今回の滞在期間中のアテンド役を担ってくれている。

 
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