その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 ◇◇◇◇

 ボストンから帰国した日の翌朝。窓のカーテン越しに柔らかな朝の光が差し込む。 まだ少しぼんやりとした頭でリビングに出ると、キッチンには真澄の姿があった。

 「おはよう起きた?」
 「……はい。おはようございます」

 手が伸びて、額にそっと触れられた。

 「……っ、な、なにして――」
 「熱はなさそうだな。肌も荒れてないしクマもできてない」

 それだけ言って、自然な仕草で前髪を直してくる指先がやけに優しい。

 「目が開きにくいとか腫れている感じはないか?」
 「大丈夫です…あの、これって体調チェックですか……?」
 「当然。フライトも長かったしもう一日休めばよかったのに」
 「そういうわけにもいかないですよ。土日挟んだとはいえ、有休も使っちゃいましたし……あれ、なんかいい匂い」

 リビングに入った澪がそうつぶやくと、キッチンカウンターの向こうに立っていた真澄が手元の皿を差し出した。

 「わぁ、すごい、カフェみたいな朝食…」

 プレートに並べられていたのは、サーモンと卵のサンドイッチに、バナナ入りのヨーグルトボウル。そして、ふわりとミルクの香りが立ちのぼる、カフェオレ。

 「朝から、豪華すぎません……?」
 「時差ボケに効く食材を使っただけだ。まずは体内時計をリセットすることが大切だからな」
 「……へぇ……」

 半分ぼんやりした頭のまま席に着くと、真澄がサンドイッチの皿をそっと目の前に置いてくれた。

 
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