その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 「トリプトファンを多めに含んだ食材を選んだ」
 「……トリプロ……何ですか?」
 「トリプトファン。セロトニンの材料になるアミノ酸だ。朝に摂っておくと、体内時計が整って、夜に自然と眠くなりやすくなる」

 パンの間に挟まれたサーモンとふわふわの卵、そしてサラダのアボカドの緑。栄養バランスだけでなく、見た目も抜群で、ちゃんと美味しそう。そして、淹れたてのカフェオレが入ったマグカップが置かれる。

 「いつもよりミルクを多めにしてある。乳製品にもトリプトファンは多く含まれてるからな」
 「……ありがとう、ございます。あ、このマグカップ!」

 赤とネイビーで『I♡BOSTON』と書かれたマグカップ。帰国する日、フライトまでの時間の間ボストンの街を少しだけ観光したのだ。そのときに立ち寄ったクインシーマーケットで買ったお土産だった。
 ベタと言えばベタだけれど、いかにもアメリカといった感じの色遣いとデザインが気に入った。

 真澄もボストンの街の風景が描かれているマグカップに口をつけている。
 それを見ると、何だかくすぐったい気持ちになった。

 「どうかしたか?」
 「いえ、なんか一晩起きたら、この数日間のことが夢みたいでしたけど、このマグカップがあると現実なんだなあって」

 マグカップを手に取ってひと口飲む。ほんのり甘くて、飲みやすいちょうどいい温度だった。
 ふと気配を感じて顔を上げると、キッチンのカウンター越しにこちらを満足そうな表情でこちらを見ている真澄と、視線がぶつかった。

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