その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 スーツ姿でオフィスに入った澪は、おはようございます」と声をかけながら、紙袋を手にしていた。

 「えっ、それボストンのお土産?」
 「わぁオシャレなお菓子!」

 早速集まってきた同僚たちに、澪は少し恐縮しながら手渡していく。

 「ご迷惑おかけしました。先週、有休とらせていただいてたので……」

 ミントブルーの缶に入ったチョコレートなどのお菓子や、現地で人気だというちょっとした雑貨をお土産にしていた。

 「わぁおしゃれ、ありがとう小野寺さん!」
 「もう、新婚早々旦那さんの学会に同行ってほとんど新婚旅行じゃないですか~?」
 「ち、違うよ!? あの、ほんとに、真面目な学会で……っ!」

 慌てて否定しながらも、顔が一気に熱くなる。

 「でもさ、あの柊木真澄先生でしょ?前に医療ドキュメンタリーでも取り上げられてたの見たもの」
 「そんな人と学会同行なんて、完全に外科医の妻って感じ!」
 「……私は何もしてないよ。すごいのは、真澄さんだから」

 ふいに口をついて出た言葉に、場が一瞬静まる。

 「いつの間に真澄さん呼び!?」
 「もうダメ、語感が尊い!!」
 「え、ちょ、ちが……っ、そういうのじゃなくて……!」

 必死に弁解する澪だったが、もはや誰も聞いていない。お土産のチョコ缶を開けながら、完全に新婚ほやほやラブラブ扱いが確定していた。
 笑いの渦が起こる中、澪は顔を両手で覆いたくなりながら、唇に残っていた今朝のキスの温度が、まだじんわりと残っていて、その空気を思い出すたびに、もう一度、顔が熱くなってしまうのだった。

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