その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています

第八章 君じゃないと意味がない(真澄Side)

 「お疲れさまです。これ、ボストンの土産です。よかったら休憩のときにでも」

 そう言って差し入れを置いた途端、ナースステーションにいた看護師たちが一斉に目を丸くした。

 「えっ、柊木先生!?お土産!?ボストンの!?」
 「やっぱり奥さんと一緒だったんですよね!?先生の奥さん、うちの病院に出入りしてるって噂聞きましたけど……本当ですか?」
 「え~~!どんな方なんですか!?見た~い!写真ないんですか?」

 (……想像以上に食いつかれたな)

 内心ため息をつきつつも、スマートフォンを取り出してふと指が止まる。

 (……この写真なら)

 選んだのは、ボストンのホテルで撮ったレセプション前――イヴニングドレスに身を包んだ澪が、少し照れたように笑っている一枚。
 スマホの画面を見せると、一瞬静寂が訪れる。

 「……えぇ、めちゃくちゃ可愛いひとじゃないですか!?」
 「ほんとに奥さん!?このドレス姿女優さんみたい…メイクもなんか艶っぽいし」
 「あの澄ました顔でこんな奥さんが…」
 
 (澄ました顔は余計だな…)

 そんな反応を流しつつ真澄はスマートフォンを手元に戻すと、画面をスリープにしてポケットへとしまいこんだ。

 ふと、思い出す――学会の壇上から見えた、誰よりも真剣に、そして不安げにこちらを見ていた表情。
 泣きながら、それでも必死に自分の気持ちを伝えてくれた。誰よりも不器用に、誰よりもまっすぐに。それが彼女らしいと思った。

 
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