その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 彼女と出会って、隣りで過ごすうちに気づいた。
 仕事でもなく、契約でもなく――彼女に惹かれていた。毎日の小さな仕草も、たまに見せる素直な表情も。少し拗ねた声も、たまに見せる遠慮がちな優しさも。そのすべてが愛おしく思えたことを。

 これが、恋なんだとようやく理解した。

 そう伝えたあの夜のことを、たぶん一生忘れないだろうと思う。

 彼女の指先を絡め、柔らかな髪を撫でて、何度も名前を呼んだ。

 シーツの中で小さく喘いだ彼女の声も、額に汗をにじませて、ぎゅっとシャツの胸元を握りしめた細い手も、すべてを委ねてくれた、あたたかな体温も。愛しさと幸福とで、何もかもが溢れそうだった。

 そして夜が明けたとき、ベッドの中で眠っている澪の姿を見て思った。

 これから先の人生も、ずっと彼女と歩いていきたい。
 たとえ、契約から始まった関係だったとしても。

 (……澪じゃなければ、意味がない)

 この先自分がどんな選択をしたとしても。
 夫として、ひとりの人間として――自分の中心には、きっとあの夜の彼女がいる。

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