裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
和葉はそう結論を出して、唯一の連絡手段である弁護士に連絡した。
『別の男性と結婚が決まりハワイに移住するので、慰謝料はいりません』
渡米した和葉は叔母の家に居候させてもらいながら必死に働いた。独身時代の貯金もあり叔母も実家も経済的な余裕はある、なにより妊娠中なのだからはじめはゆっくりでいいと言われたが、がむしゃらにやることが自分には必要だと思ったからだ。
叔母の庇護のもとにいるのは変わりないけれど、自分の力で生きていけるように、学べることはなんでも学び、すべてを吸収して。
毎日一歩ずつ世界が広がっていくような日々だった。
HOPHOPのスタッフは叔母が採用しているが、社会的に困難な状況にある者が多かった。パートナーをドラッグで亡くしたシングルマザー、親から虐待を受けて育ったハイスクール中退者、施設出身者など。生きているのが不思議だという状況の者もいたけれど、皆、HOPHOPでの仕事を得て生活を立て直し将来に希望を持てている。
そんな彼らと一緒に働き、和葉はますます自分の未熟さを反省した。婚約者に捨てられたくらいで絶望して日本から逃げてきたなんて、恥ずかしくてとても言えない。
樹が生まれてからは、それこそ育児に仕事にと目の回る忙しさで、もはや過去を振り返る余裕はなくなった。そして成長する樹をそばで見られるという喜びに満たされた。
そんな日々が、遼一に対する気持ち——失望と怒りを、和らげ癒していった。
彼の立場を考えると、やり方はともかく婚約破棄は仕方がなかったと思えるようになったのだ。
彼はNANA所属のパイロットの中でもずば抜けて優秀で、人望もあり、同期の中では一番早く機長に昇格した貴重な人材だ。ましてや将来、巨大な企業を背負う立場でもある。そんな人にとって結婚相手は重要だ。
パイロットは乗客の命を預かるという重大な責任を負う。
だから自己のコンディションを最高の状態に保つのが最低限の職責だ。パートナーは、家柄もさることながら、精神的にも彼を支えられるような強い人でなくてはならない。間違っても彼になにかを頼るような人間であってはならないのだ。そういう意味で自分にはその資格はなかった。
『別の男性と結婚が決まりハワイに移住するので、慰謝料はいりません』
渡米した和葉は叔母の家に居候させてもらいながら必死に働いた。独身時代の貯金もあり叔母も実家も経済的な余裕はある、なにより妊娠中なのだからはじめはゆっくりでいいと言われたが、がむしゃらにやることが自分には必要だと思ったからだ。
叔母の庇護のもとにいるのは変わりないけれど、自分の力で生きていけるように、学べることはなんでも学び、すべてを吸収して。
毎日一歩ずつ世界が広がっていくような日々だった。
HOPHOPのスタッフは叔母が採用しているが、社会的に困難な状況にある者が多かった。パートナーをドラッグで亡くしたシングルマザー、親から虐待を受けて育ったハイスクール中退者、施設出身者など。生きているのが不思議だという状況の者もいたけれど、皆、HOPHOPでの仕事を得て生活を立て直し将来に希望を持てている。
そんな彼らと一緒に働き、和葉はますます自分の未熟さを反省した。婚約者に捨てられたくらいで絶望して日本から逃げてきたなんて、恥ずかしくてとても言えない。
樹が生まれてからは、それこそ育児に仕事にと目の回る忙しさで、もはや過去を振り返る余裕はなくなった。そして成長する樹をそばで見られるという喜びに満たされた。
そんな日々が、遼一に対する気持ち——失望と怒りを、和らげ癒していった。
彼の立場を考えると、やり方はともかく婚約破棄は仕方がなかったと思えるようになったのだ。
彼はNANA所属のパイロットの中でもずば抜けて優秀で、人望もあり、同期の中では一番早く機長に昇格した貴重な人材だ。ましてや将来、巨大な企業を背負う立場でもある。そんな人にとって結婚相手は重要だ。
パイロットは乗客の命を預かるという重大な責任を負う。
だから自己のコンディションを最高の状態に保つのが最低限の職責だ。パートナーは、家柄もさることながら、精神的にも彼を支えられるような強い人でなくてはならない。間違っても彼になにかを頼るような人間であってはならないのだ。そういう意味で自分にはその資格はなかった。