裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
帰国してからの一カ月は瞬く間に過ぎた。
ハワイでもリモートを駆使してできる限りの準備は進めていたものの、帰国してみると想定と違っていることもちょくちょく発生した。
まず店長の啓が飲食店の開業に必要な食品衛生責任者や防火責任者の資格を取るのが難しいと判明した。彼は中学卒業と同時に渡米していて以降の教育をアメリカで受けたからだ。
そこで急遽和葉が資格を取り、書類上の責任者となった。
そのほかにも、やはり日本の取引先とは日本での就職経験がある和葉の方がやりやすく向こうもそれを望んだため、契約等は和葉が行った。
代わりに啓は、店舗自体の準備、物の配置や提供までの流れの確認や、マニュアルの作成を担当し、さらに持ち前の明るさを武器に地元情報誌への発信やメディアでの宣伝活動に勤しんだ。
そして六月に入り、オープンまであと一週間と迫った日の休日、和葉は、自宅にて洗濯物を畳みながら携帯をハンズフリーにして懐かしい人と通話している。
《へぇ、来週オープンなんだ。そういえばもう看板出てるよね。後輩の子たちが騒いでた。CAの子たちは現地で食べたことあるらしくてめっちゃ美味しいって評判で》
グランドスタッフ時代の同期、上林麻衣子である。
《だけどホントびっくりだったよー帰国するとは聞いてたけどもうすでに日本にいるなんて。搭乗する便がわかってたら会いに行ったのに》
「ごめんごめん、帰国が急に早まってさ。なんかバタバタしてて」
帰国してからは、仕事自体も忙しかったが、保育園の手続きなど樹の生活を整えるのにも忙しく毎日がバタバタだ。まだ落ち着いたとは言えない状況だ。
「私、日本での子育てにも慣れてないから、もう毎日大変」
《あー、まぁそうだよね。ハワイとは全然違いそうだよね。ね、マンションって空港から電車で一本なんでしょ? 今度遊びにもいい? 樹くんにも会いたいし。大きくなったんだろーなー。生まれた時の写真しか見てないけど》
「うん、来て来て! お店がオープンしたら休みも前もって取れるようになるはずだから」
前職を辞めた時の事情が事情だから同僚たちとは連絡を取っていないが、彼女とだけは繋がっている。
新人研修で親しくなった彼女とはプライベートも親しくしていたので、婚約破棄やハワイへ渡った経緯もすべて知っている唯一の友人だ。
《忙しいのは仕方がないし、まぁ焦ることはないよね。しばらくはこっちにいるんでしょ? てかずっと?》
「それは流動的かな……。一号店が成功すれば、店舗を増やす計画だから、そうなればそのまま日本って可能性が高いけど、うまくいかなくて撤退なら戻ることになるし」
《そうなんだ。成功したらいいね……って感じでいいのかな? 和葉は日本よりハワイの方がいい?》
ハワイでもリモートを駆使してできる限りの準備は進めていたものの、帰国してみると想定と違っていることもちょくちょく発生した。
まず店長の啓が飲食店の開業に必要な食品衛生責任者や防火責任者の資格を取るのが難しいと判明した。彼は中学卒業と同時に渡米していて以降の教育をアメリカで受けたからだ。
そこで急遽和葉が資格を取り、書類上の責任者となった。
そのほかにも、やはり日本の取引先とは日本での就職経験がある和葉の方がやりやすく向こうもそれを望んだため、契約等は和葉が行った。
代わりに啓は、店舗自体の準備、物の配置や提供までの流れの確認や、マニュアルの作成を担当し、さらに持ち前の明るさを武器に地元情報誌への発信やメディアでの宣伝活動に勤しんだ。
そして六月に入り、オープンまであと一週間と迫った日の休日、和葉は、自宅にて洗濯物を畳みながら携帯をハンズフリーにして懐かしい人と通話している。
《へぇ、来週オープンなんだ。そういえばもう看板出てるよね。後輩の子たちが騒いでた。CAの子たちは現地で食べたことあるらしくてめっちゃ美味しいって評判で》
グランドスタッフ時代の同期、上林麻衣子である。
《だけどホントびっくりだったよー帰国するとは聞いてたけどもうすでに日本にいるなんて。搭乗する便がわかってたら会いに行ったのに》
「ごめんごめん、帰国が急に早まってさ。なんかバタバタしてて」
帰国してからは、仕事自体も忙しかったが、保育園の手続きなど樹の生活を整えるのにも忙しく毎日がバタバタだ。まだ落ち着いたとは言えない状況だ。
「私、日本での子育てにも慣れてないから、もう毎日大変」
《あー、まぁそうだよね。ハワイとは全然違いそうだよね。ね、マンションって空港から電車で一本なんでしょ? 今度遊びにもいい? 樹くんにも会いたいし。大きくなったんだろーなー。生まれた時の写真しか見てないけど》
「うん、来て来て! お店がオープンしたら休みも前もって取れるようになるはずだから」
前職を辞めた時の事情が事情だから同僚たちとは連絡を取っていないが、彼女とだけは繋がっている。
新人研修で親しくなった彼女とはプライベートも親しくしていたので、婚約破棄やハワイへ渡った経緯もすべて知っている唯一の友人だ。
《忙しいのは仕方がないし、まぁ焦ることはないよね。しばらくはこっちにいるんでしょ? てかずっと?》
「それは流動的かな……。一号店が成功すれば、店舗を増やす計画だから、そうなればそのまま日本って可能性が高いけど、うまくいかなくて撤退なら戻ることになるし」
《そうなんだ。成功したらいいね……って感じでいいのかな? 和葉は日本よりハワイの方がいい?》