裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 気まずそうに問いかけるのは、和葉が遼一と会うのを心配してくれているのだろう。
 実はすでに遭遇しましたという事実は伏せて、和葉は明るい声で答える。
「ううん、できればこのまま日本にいたいなって思ってる。確かにハワイは気候もいいし子育てもやりやすかったけど、実家がこっちだからね。両親にもちょくちょく孫の顔を見せたいから」
 いずれは帰国するというのは叔母とも話し合っていることだった。樹の将来について叔母からもいろいろアドバイスを受けていて、就学は日本の方がいいのでは?と言われているからだ。
 和葉もそう思ったけれど、帰国するならHOPHOPを離れなければならない。それはできれば避けたいから、そういう意味でも絶対に成功させたかった。
「どっちにしても樹の小学校入学に合わせて帰国しようかなって思ってて、一号店が成功して日本でも店舗を展開できれば今の仕事を続けられるでしょ? だから絶対成功させたいんだ」
 もちろんHOPHOPのパンケーキを日本に広めたいという思いもある。
 叔母が試行錯誤を重ねて完成したという秘伝のレシピで焼くパンケーキは、最高に美味しくて食べると心が温かくなる。傷心のうちにハワイへ渡りはじめて口にした時、どれだけ慰められたか。
 その味をたくさんの人に食べてもらいたい。そしてそれが叔母への恩返しにもなるのだから、和葉にとっては一石二鳥どころか、一石三鳥の話なのだ。
「麻衣子の後輩が来てくれそうなら、感想もらえると嬉しいな。しばらくはメニューも試行錯誤だからさ」
 勢い込んで和葉が言うと、電話の向こうで、麻衣子がふふっと気配がした。
《和葉変わったね》
< 21 / 146 >

この作品をシェア

pagetop