裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
「言ってません。はじめにそう約束したでしょう?」
 少しムッとして答えると、遼一が安堵したように頷いた。そしてすぐに元の表情に戻る。
「子供のことをこのままうやむやにするつもりはない。いずれはきちんとするからそこは安心してくれていいが、しばらくは内密にしてくれ」
 胸がずきずきと痛むのを感じながら、和葉は唇を噛んで頷いた。
 さっきまで感じていた懐かしい思いが一気に冷えていく。
 以前よりは関係が改善し、優しさを感じられたとしても、自分たちが彼にとって都合が悪い存在だと言うことには変わりない。彼にとっては、絶対に周りに知られてはいけない秘密なのだ。
 どんなに優しくされても自分を捨てた冷酷な彼を本心から信じてはいけないと、心の中で改めて確認した。
 そしてもう何度も繰り返したこの流れを、これからずっと続けるのだろうかと暗澹たる思いになる。
 やっぱりこの前、本音を言わなければよかったと後悔する。
 別れた際の和葉の苦しみを知ったからこそ、彼は和葉に罪悪感を抱き、少しは優しくする気になったのだろう。
 でもそれが、今の自分にはつらかった。
 こんなことならば、もっと冷たくしてほしい。子供のために会ってるだけ、お前には興味はないと態度で示してほしかった。
 どう取り繕ったって、彼はひどいやり方で自分を捨てた悪い男(ひと)。その事実に変わりはないのだから。
 ……けれど当然、それを言うわけにはいかなかった。
 ずっと嫌いなままでいさせてほしい。そう思うことこそが、気持ちが彼に戻りかけている証拠なのだろう。
 戻った先に、明るい未来などないのに。

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