【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
「見る、聴く、嗅ぐ、味わう、触れる。例えば……懐かしい味で記憶を取り戻したとか、そういう話があるそうだ」
「懐かしい味……」
「王都に、君が好きだった焼き菓子店がある。戻ったら、そこに行ってみよう」
「それは、記憶云々関係なく、楽しみですね。ヘリオスも喜びそうです」
 単純に王都の菓子店に興味があった。シアの声が明るくなり、ジェイラスの表情も晴れる。これで味覚の刺激はできそうだ。
「他には聴覚、視覚、嗅覚、触覚……?」
 シアがぽつりと呟くと、ジェイラスの目が大きく開いた。
「……その……触れてもいいか?」
「え? あ、はい……?」
 二人が恋人同士であることを考慮すれば、触れ合いがあってもおかしくはない。
「いや、あの、その……やましい気持ちがあるわけではなく。その……手を握れば、少し何か、刺激になって思い出すかと……」
 先ほどからジェイラスの表情はころころと変わり、幼い我が子を見ている気持ちにもなる。
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