【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 片手で軽々とヘリオスを抱き、空いた手でアリシアの手を握るジェイラスだが、その言葉が彼の本音でないことくらい、アリシアだってわかっている。
「シアだって大事な時期だろう?」
「でも、体調はだいぶよくなったし。リオと一緒に外を歩いたほうが気晴らしになるし」
「ね」とアリシアが声をかければ、ヘリオスも同じように「ね」と言う。
 一か月ほど前、アリシアは大きく体調を崩した。胃がムカムカして何も食べられず、食べ物を見ただけで吐き気に襲われる。急いで医師の診察を受けたところ、妊娠三か月とわかったのだ。
 しかし悪阻が酷い。水を飲んでも戻してしまうような状況で、薬湯と安静でなんとか動けるようになったのは、ほんの数日前だった。
 その間、ジェイラスは「仕事に行かない」と駄々をこねそうになったが、そうなる前にアリシアが諭した。
 アリシアが寝込んでいる間は、公爵がヘリオスと一緒にいてくれたが、今度はその公爵が寝込んでいるというわけだ。
「やはり、殿下に頼んで、俺も一か月くらい休みをもらおう」
「ダメよ。チェスターさんの頭が……」
 チェスターがランドルフに振り回され、頭髪を気にしているというのは周知の事実となっている。
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