野いちご源氏物語 二〇 朝顔(あさがお)
叔母宮(おばみや)はいかにもお年寄りらしい感覚でいらっしゃって、薄暗くなるともう深夜のようにお感じになる。
そのうえ雪もちらついているから、
源氏(げんじ)(きみ)はお見舞いに行きますというお手紙をくださったけれど、今夜はもうお越しにならないだろう>
と思っていらっしゃった。
源氏の君がお越しになったと聞いて、あわててお屋敷の正門を開けさせなさる。

門番(もんばん)が寒さに震えながら出てきた。
(かぎ)を開けようとするけれど、なかなかうまく開かないの。
他に男の召使(めしつか)いはいないらしく、自分でなんとかしようと苦労している。
「鍵がひどく()びてしまって」
と独り言を言うのを、源氏の君は乗り物のなかで聞いて同情なさる。

式部卿(しきぶきょう)(みや)様がお亡くなりになったのはつい先日のような気がするが、もう半年以上経つのだ。鍵が錆びついてしまうほどの時間が、あっという間に流れていった。そのような(はかな)い世の中に、私は出家(しゅっけ)もせずしがみつづけている。あらゆるものに動じないどころか、紅葉(もみじ)や桜にいちいち感動しているのだから、(おろ)かなことだ>
とご自分をお責めになる。
「立派で堂々としたお屋敷だったのに、いつの間にこんなに荒れてしまったのか」
とつぶやいていらっしゃると、やっと門が開いた。
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