死に戻り聖女は兄の願いを叶えたい〜気づいていないけど、無償の愛に包まれています〜
運命が変わった日
「セレーネ、俺とアグネスが元の姿に戻って入れ替わったことには気づいているのか?」
レオンはセレーネが自分との約束を破って駆けつけてきたことが予想外だったのか、少し驚いたようにセレーネに尋ねた。
「こうやって、この会話を交わすだけであなたが本物のレオンだとわかる。わたしを見くびるな。それに私とアグネス嬢の仲だ。さっきの霧がアグネス嬢の魔法であることぐらいは知っているのだよ」
「そうだろう」とセレーネは満面の笑みでアグネスに視線を送り同意を求めた。アグネスは一瞬は戸惑ったものの、初めてセレーネと会った時のことや、死に戻る前のウェディングドレスを着ていたことを心配して、黄色いドレスをお下がりだと言ってくださったことなどを思い出し、その時からセレーネと特別な絆が出来たようでうれしくって、セレーネに満面の笑顔で返した。
それを見たセレーネは満足げにアグネスに微笑んだ。
「そうか。俺の知らないうちに女同士で仲良くなっていたのだな。セレーネにいまから安全なところまで戻れと言っても聞く耳を持たないだろう。セレーネのその気持ちをありがたく受け取るよ。アグネスを頼んだぞ」
レオンは諦め顔でセレーネにアグネスを託す。
(なんとしてでもふたりは守るからかな)
レオンはふたりを包み込むような優しい瞳でふたりを見た。
「レオン、あまり時間がないぞ!」
ノアはこのやり取りを3人の横で聞きながら、矢面に立ち魔獣から守っていてくれた。
その横顔はいままでにレオンが見たことがないぐらい晴れ晴れとし、そして守る者ができ、覚悟を決めた男の表情だった。
先ほどのようにノアが声を張り上げて、騎士達を鼓舞したことなど今までにはなかったことだ。
レオンはノアの中でなにか良い変化が起きたことを感じていた。
その後、ノアが騎士達を鼓舞したこともあり、高い士気を維持したまま、皆が魔獣と最後の死闘を繰り広げる。
騎士団長と副団長の指揮の元、ノアとレオンのふたりが他の騎士達の手助けをしたり、または助けられたりと素晴らしい連携で、次々と魔獣が倒されていく。
セレーネに守られながら、聖女アグネスは魔獣の炎を阻止する魔法を繰り出し、魔獣と戦う騎士達の援護に専念した。
そして、ついに最後の1体が倒されると、騎士達から大きな歓声が上がった。
「ノア!」
「やったな!レオン!」
ふたりはその喜びの勢いのまま、お互いの手をしっかりと強く握り固い握手を交わす。
そして、どちらからともなく抱擁をした。ノアもレオンもお互いの背中を強く抱きしめる。
「いま、全ての運命が変わった」
レオンはノアだけに聞こえるように耳元で小声で言った。ノアはひとつ大きく頷いた。
「俺は死に戻る前、アグネスを守り切ることは出来なかった。これからはその役目をノアに託すよ」
レオンはノアの背中を強く抱きしめていた手を緩め、顔を上げると真っすぐとノアを見て、両手でノアの肩を軽く叩いた。
レオンのその瞳からは一筋の涙が溢れていた。
「……レオン」
レオンはその涙を隠すようにサッと拭くと踵を返す。
「ノア、早くふたりのところに戻ろう」
魔獣を倒したにも関わらず、まだ憂いの残るレオンの瞳を見てノアは嫌な予感がしたが、次から次へと褒め称えにくる仲間と言葉を交わしているうちに、ノアはレオンに涙の理由を問うきっかけを失った。
そしてふたりはすぐにアグネスとセレーネの元に戻った。
「セレーネがもう魔獣に殺される心配はなくなったと思うと俺は…」
ノアとアグネスが目の前にいるにも関わらず、セレーネの顔を見るなり、そう言って感極まったレオンはそのあとは言葉にならず、そのままセレーネを抱きしめた。
「約束を破ってすまなかった」
セレーネはレオンの腕の中で苦笑いをするが、その瞳には涙を浮かべている。
「無事ならそれでいい」
レオンは涙をこらえるかのように静かにささやくと、ふたりは人目を憚らず額と額を合わせ見つめ合うと、自然とキスを交わした。
「お、お兄…様」
アグネスは初めて見る兄のキスシーンや、愛しい人を見るその優しい眼差しと表情に狼狽え、助けを求めるかのように傍にいるノアを見ると、ノアとすぐに目が合った。
ノアもレオンのそのような表情や行動には驚いたようだったが、ノアは伺うようにアグネスを見ると、少し悪巧みをするような恥ずかしげな表情をして、僅かに口角を上げた。
するとノアの腕がアグネスに伸びてきて、アグネスはノアに肩を抱き寄せられると、額にキスをひとつ落とされた。
アグネスは心拍数が一瞬で跳ね上がったのは言うまでもない。
「ノア、いや「ランドルフ・ノア・ネーデルラント」殿下、に申し上げたいことがございます」
4人はしばらく他の大勢の騎士仲間と勝利の喜びを分かち合っていると、騎士団長と副団長がやってきた。
すると、その場は一瞬にして水を打ったように静まり返った。
「おふたりとも、どのような御用でしょうか?それにその名の男は何年も前に死んでおります。ここにいるのはただの「ノア」という男です」
ノアは硬い表情できっぱりと言い切った。
騎士団長も副騎士団長も大きく首を横に振った。
「いえ、貴方様は間違いなくランドルフ殿下です。「殿下」と呼ばれる人物に相応しいことをご自身で自覚してください。それを皆が証明しています」
周りを見ると、騎士仲間達がとても良い笑顔で頷いている。
「…これは…」
「誰がこの国の指導者に相応しいのか一目瞭然。ランドルフ殿下、貴殿の圧倒的な指導者の素質を今回の戦いでまざまざと見せられたのです」
騎士団長は少し離れたところで、騎士達に見張られているヴィクター殿下に視線を一瞬移して、眉をひそめた。
ヴィクター殿下はまだ汚い言葉で騎士達をなじっていた。
「ヴィクター殿下は戦況が悪くなると、すぐに我々を見捨てられました。しかし、貴殿はどうでしたか?殿を務め、ひとりでも多くの仲間を助けようとされた」
「それは…」
ノアが言いかけたところで副団長がノアの言葉を遮った。
「ここにいる誰もがランドルフ殿下を支持します。「ノア」のこれまでの努力をここにいる全員が知っています。貴殿のその剣は飾りでないこともよく知っています。我々は貴殿のその剣に救われた。我々騎士団はいまからランドルフ殿下につきます」
副団長がそう宣言すると、その場にいた騎士達全員が一斉に跪いた。右膝をつき頭を下げる。
「騎士団は万民のための自由と正義を備えたランドルフ・ノア・ネーデルラント第一殿下に忠誠を誓います」
騎士団長が声高らかに宣誓した。
レオンはセレーネが自分との約束を破って駆けつけてきたことが予想外だったのか、少し驚いたようにセレーネに尋ねた。
「こうやって、この会話を交わすだけであなたが本物のレオンだとわかる。わたしを見くびるな。それに私とアグネス嬢の仲だ。さっきの霧がアグネス嬢の魔法であることぐらいは知っているのだよ」
「そうだろう」とセレーネは満面の笑みでアグネスに視線を送り同意を求めた。アグネスは一瞬は戸惑ったものの、初めてセレーネと会った時のことや、死に戻る前のウェディングドレスを着ていたことを心配して、黄色いドレスをお下がりだと言ってくださったことなどを思い出し、その時からセレーネと特別な絆が出来たようでうれしくって、セレーネに満面の笑顔で返した。
それを見たセレーネは満足げにアグネスに微笑んだ。
「そうか。俺の知らないうちに女同士で仲良くなっていたのだな。セレーネにいまから安全なところまで戻れと言っても聞く耳を持たないだろう。セレーネのその気持ちをありがたく受け取るよ。アグネスを頼んだぞ」
レオンは諦め顔でセレーネにアグネスを託す。
(なんとしてでもふたりは守るからかな)
レオンはふたりを包み込むような優しい瞳でふたりを見た。
「レオン、あまり時間がないぞ!」
ノアはこのやり取りを3人の横で聞きながら、矢面に立ち魔獣から守っていてくれた。
その横顔はいままでにレオンが見たことがないぐらい晴れ晴れとし、そして守る者ができ、覚悟を決めた男の表情だった。
先ほどのようにノアが声を張り上げて、騎士達を鼓舞したことなど今までにはなかったことだ。
レオンはノアの中でなにか良い変化が起きたことを感じていた。
その後、ノアが騎士達を鼓舞したこともあり、高い士気を維持したまま、皆が魔獣と最後の死闘を繰り広げる。
騎士団長と副団長の指揮の元、ノアとレオンのふたりが他の騎士達の手助けをしたり、または助けられたりと素晴らしい連携で、次々と魔獣が倒されていく。
セレーネに守られながら、聖女アグネスは魔獣の炎を阻止する魔法を繰り出し、魔獣と戦う騎士達の援護に専念した。
そして、ついに最後の1体が倒されると、騎士達から大きな歓声が上がった。
「ノア!」
「やったな!レオン!」
ふたりはその喜びの勢いのまま、お互いの手をしっかりと強く握り固い握手を交わす。
そして、どちらからともなく抱擁をした。ノアもレオンもお互いの背中を強く抱きしめる。
「いま、全ての運命が変わった」
レオンはノアだけに聞こえるように耳元で小声で言った。ノアはひとつ大きく頷いた。
「俺は死に戻る前、アグネスを守り切ることは出来なかった。これからはその役目をノアに託すよ」
レオンはノアの背中を強く抱きしめていた手を緩め、顔を上げると真っすぐとノアを見て、両手でノアの肩を軽く叩いた。
レオンのその瞳からは一筋の涙が溢れていた。
「……レオン」
レオンはその涙を隠すようにサッと拭くと踵を返す。
「ノア、早くふたりのところに戻ろう」
魔獣を倒したにも関わらず、まだ憂いの残るレオンの瞳を見てノアは嫌な予感がしたが、次から次へと褒め称えにくる仲間と言葉を交わしているうちに、ノアはレオンに涙の理由を問うきっかけを失った。
そしてふたりはすぐにアグネスとセレーネの元に戻った。
「セレーネがもう魔獣に殺される心配はなくなったと思うと俺は…」
ノアとアグネスが目の前にいるにも関わらず、セレーネの顔を見るなり、そう言って感極まったレオンはそのあとは言葉にならず、そのままセレーネを抱きしめた。
「約束を破ってすまなかった」
セレーネはレオンの腕の中で苦笑いをするが、その瞳には涙を浮かべている。
「無事ならそれでいい」
レオンは涙をこらえるかのように静かにささやくと、ふたりは人目を憚らず額と額を合わせ見つめ合うと、自然とキスを交わした。
「お、お兄…様」
アグネスは初めて見る兄のキスシーンや、愛しい人を見るその優しい眼差しと表情に狼狽え、助けを求めるかのように傍にいるノアを見ると、ノアとすぐに目が合った。
ノアもレオンのそのような表情や行動には驚いたようだったが、ノアは伺うようにアグネスを見ると、少し悪巧みをするような恥ずかしげな表情をして、僅かに口角を上げた。
するとノアの腕がアグネスに伸びてきて、アグネスはノアに肩を抱き寄せられると、額にキスをひとつ落とされた。
アグネスは心拍数が一瞬で跳ね上がったのは言うまでもない。
「ノア、いや「ランドルフ・ノア・ネーデルラント」殿下、に申し上げたいことがございます」
4人はしばらく他の大勢の騎士仲間と勝利の喜びを分かち合っていると、騎士団長と副団長がやってきた。
すると、その場は一瞬にして水を打ったように静まり返った。
「おふたりとも、どのような御用でしょうか?それにその名の男は何年も前に死んでおります。ここにいるのはただの「ノア」という男です」
ノアは硬い表情できっぱりと言い切った。
騎士団長も副騎士団長も大きく首を横に振った。
「いえ、貴方様は間違いなくランドルフ殿下です。「殿下」と呼ばれる人物に相応しいことをご自身で自覚してください。それを皆が証明しています」
周りを見ると、騎士仲間達がとても良い笑顔で頷いている。
「…これは…」
「誰がこの国の指導者に相応しいのか一目瞭然。ランドルフ殿下、貴殿の圧倒的な指導者の素質を今回の戦いでまざまざと見せられたのです」
騎士団長は少し離れたところで、騎士達に見張られているヴィクター殿下に視線を一瞬移して、眉をひそめた。
ヴィクター殿下はまだ汚い言葉で騎士達をなじっていた。
「ヴィクター殿下は戦況が悪くなると、すぐに我々を見捨てられました。しかし、貴殿はどうでしたか?殿を務め、ひとりでも多くの仲間を助けようとされた」
「それは…」
ノアが言いかけたところで副団長がノアの言葉を遮った。
「ここにいる誰もがランドルフ殿下を支持します。「ノア」のこれまでの努力をここにいる全員が知っています。貴殿のその剣は飾りでないこともよく知っています。我々は貴殿のその剣に救われた。我々騎士団はいまからランドルフ殿下につきます」
副団長がそう宣言すると、その場にいた騎士達全員が一斉に跪いた。右膝をつき頭を下げる。
「騎士団は万民のための自由と正義を備えたランドルフ・ノア・ネーデルラント第一殿下に忠誠を誓います」
騎士団長が声高らかに宣誓した。