(改稿版)小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
深夜帯も赤ちゃんに異変はなく、無事に日勤のドクターに引き継ぎを終えて俺は研究室に向かった。

「高浜教授、引き継ぎ終わりました。詳細はカルテに記載していますが、数値も問題なさそうで、無事に朝を迎えられて良かったです」

「おお、お疲れさま。イブの夜に悪かったな。茉祐子ちゃんにも弁当のお礼を言ってくれ。あのおかず、西島たちの晩メシだったんだろう?」

「いいんです。それじゃ、着替えて帰りますね。何かあればいつでも連絡ください」

「ああ、そうするよ」

高浜教授はこれから講義なのか、姿見の前でシャツにネクタイを締めていた。
疲れているはずなのに、そんなそぶりも見せないエネルギッシュな人だ。

「なぁ西島」

「はい」

「こっちに・・大学病院に移ってこないか? 臨床の腕、想像よりもずっと上がっていて驚いたよ。俺のもとで、もっと幅広く経験を積んでみないか? 西島も知っていると思うが、俺自身が一緒に研究したいと声をかけるドクターはなかなかいないんだぞ。
まぁ、返事は急がないからゆっくり考えてみてくれ」

そう言うと、高浜教授はノートPCを手に研究室を出て行った。

幅広い経験・・か。
高浜教授に誘われるなんて、考えてもみなかった。

俺はむしろいろいろな経験を積むために、提携の総合病院に移りたいと言ったのだ。
大学病院で診るような専門性の高い症例だけじゃなく、もっと一般的な症例を扱ったり、今みたいに救急外来のヘルプに行って他科のドクターとも交流したり・・。

そんな俺に、声を掛けてくれた。
当然、高浜教授のいう大学病院でしか得られない『幅広い経験』が何かは分かっているつもりだ。

今の俺なら・・。
やって・・みるか・・?

突然目の前に現れた道に戸惑いつつも、昨晩の出来事が俺を後押ししてくれるような気がした。



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