(改稿版)小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
自宅への帰り道、俺はポケットの中にある小さなケースをずっと握っていた。
そう、指輪のケースだ。

プロポーズ・・どうしようか。

そもそも決めていたタイミングは逃したわけで、仕切り直して今日にするのか、さらに別の日にするか・・。

元々の予定では今夜当直だったけれど、高浜教授から医局長に状況を説明してもらい、今夜は休みにしてもらった。

「あーーー、何て言おう・・」

何も決まらないまま、自宅のドアの前でうなだれる。

カチャッ。

静かにドアが開く。

「あ・・声が聞こえた気がして・・・・。お帰りなさい」

「うん・・・・ただいま」

中に入り、目の前で俺を見ている彼女に視線を向ける。

なぜなのか、突然、彼女と初めて会った日のことが頭に浮かんだ。

あの時。

彼女に声をかけたのが俺じゃなければ。
彼女の手を握ったのが俺じゃなければ。
彼女を家に送ったのが俺じゃなければ。

いまこうして、俺のそばにいてくれただろうか。


「茉祐」


「・・どうしたの?」


「ずっと・・。これからもずっと、俺のそばにいてくれる?」


「えっ」




「俺と、結婚してほしい」



自然に言葉が紡ぎ出された。


彼女の瞳から、涙がこぼれ落ちてくる。
腕を伸ばし、俺は彼女ごとその涙を受け止めた。


「茉祐、返事・・は?」


腕の中の彼女に問いかける。

彼女はまだ涙を溜めたまま、俺を見上げて何度も頷いた。

「良かった。ありがとう、茉祐。一生大切にする」

俺は彼女に、そっとキスを落とした。



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