(改稿版)小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
ケースの蓋を開けた彼女から、『わぁ・・』ため息のような声が漏れた。

「・・これ、ふたつある。ダイヤのないシンプルな方は、もしかして祐一郎の?」

「そう。茉祐に内緒で一緒にオーダーしたんだ」

彼女の手にある指輪のケースをテーブルに置いてもらい、俺は右側に置かれたダイヤのリングを彼女の左手の薬指に着けた。

リビングの照明が反射して、キラキラと輝く。

「すごく綺麗だね。茉祐にとっても似合うよ。俺にも、茉祐が着けてくれる?」

「ドクターは指輪ができないのかと思ってたから、お揃いで買うことも考えてなかった」

「茉祐が普段見ている外科や救急のドクターは、手術や処置が多いからしていない人がほとんどだね。俺は・・外さなきゃいけない場面もあるけど、普段は着けようと思ってるよ」

「うん。じゃあ・・手を出して」

スルスルと、左手の薬指に指輪が収まっていく。
指輪を着けると、急に実感が湧いた。

「婚姻届を出す前に、茉祐に話しておきたいことがあるんだ」

俺は、高浜教授に誘われている話を彼女にした。

「いいお話ね。お受けするんでしょう? 直々のお声がけなのだし、断る選択肢もなさそうだけど」

そう言って彼女は微笑む。

「それはそうなんだけど、今までとはまた違った大変さだったり、海外に行くようなことだってあるかもしれない。そうなった時、茉祐にいろいろ負担をかけるんだろうと思ってね」

俺は高浜教授の奥さんが、教授夫人としてやらなければならないことが結構あると言っていたのを思い出す。

「そうね、そこはもう祐一郎にフォローしてもらうしかないかな。どんな職業の旦那さまもそれぞれ大変なのだろうし、なんとかなるんじゃない? 少なくとも、英語で苦労することがない分ちょっとは楽かなー」

意外に楽天的な彼女の意見を聞き、次に研究室に出勤した時に、俺は高浜教授にイエスの返事をしようと決めていた。





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