(改稿版)小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
アルコールではないけれど、お互いに『お疲れさま』とグラスを合わせた。
ふた口ほど飲んで、彼女がほうっと息を吐く。

「すごく香りがいいです。こんなジャスミンティー初めて・・」

「そう、良かった。このウーロン茶も香りがいいから、機会があったら飲んでみてください」

「はい。西島先生は・・お酒飲まないんですか?」

「全く飲まないわけじゃないけど、普段はほとんど飲まないです。あ、もしかして、僕に合わせてお酒じゃない飲み物を?」

これまでのことを考えると、俺に合わせてノンアルコールにしただけで、本当は飲みたかったのかもしれない。

「いえ、助かるな・・って。私、あまり強くないし、頭痛にもよくない気がしているんですけど、クライアントさんたちと食事に行くと断りづらい場面もあって。それに、みなさん結構な量を飲むんですよね・・」

そう言って、彼女は苦笑いを浮かべた。
そのシチュエーションは、俺にも容易に想像できる。

そこで少し話が途切れ、俺はジャスミンティーを飲む彼女をぼんやり見ていた。

今日のヘアスタイルは、緩いウェーブのまとめ髪でサイドを少し編み込んでいる。
ゴールドの小ぶりなピアスに、細いチェーンのネックレス。
手元は大きめの文字盤の時計で、指輪はしていなかった。

「ふふっ」

突然、彼女が小さく笑う。

「あ、違うんです・・。おかしくて笑ったわけじゃなくて、こういう空気感が・・なんだかいいなと思ったので」

彼女はグラスを置いて、俺に向き合った。



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