(改稿版)小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
「まぁ、そうだよな。でも、ちゃんと話を聞いたら事実は違うかもしれないし、違わなかったとしても、今だから言えることも茉祐子にあるかもしれない。
さて・・俺そろそろ行くよ。あんまり時間とれなくて悪いな」

「いや、ありがとう。今度は飲みに行こう」

立ち上がった大翔の背中を見送りながら、昨日までの出来事と聞いた話を照らし合わせてみる。

つまり・・話の流れからいくと、俺が見かけた男はその教授・・ということになるだろうか。
そう考えるのが自然だ。

だとしたら、昨日彼女の家から出てきた男もそうで、関係が切れるどころか続いていて、今も・・・・。

憶測に過ぎないとしても、それが事実かどうかを確かめるのはなかなかに酷だ。
俺にとっても、もちろん彼女にとっても。

「あー、マジかよ・・」

俺はベンチの背に頭を乗せ、空を見上げた。
彼女と付き合って、まだ2か月くらいなのに。

とはいえ、長く付き合っていれば軽く乗り越えられる問題というわけでもない。

「どうしたもんかな・・」

俺は両手で顔を覆い、何かいい考えが浮かんでこないものかと思った。

無かったことにもできないし。
どこかに消え去ることもできない。
かといって感情をぶつけることもできない。

恋愛って、こんなに厄介なものだったか・・。

いや、むしろこれが『恋愛』だというなら、これまでの関係が薄いものだったのだ。

俺は、どうしたいんだ。
彼女がどうか、ではなく。

どうして好きになった?
どこを好きになった?

彼女のやわらかい笑顔が、瞼の裏側に浮かぶ。
微笑み返すどころか、ますます気持ちが重くなった。





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