(改稿版)小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
4.彼女への想い
彼女のことを考えないようにしようと思えば思うほど、その隙間は仕事で埋まり、あっという間に時間が過ぎていく。

あえてそうした。
どうしようもなくて。

彼女も、俺が連絡もせずにドアノブにケーキの袋を下げて帰った意味を、後から察したんだろう。
あの男の、例の教授の存在を俺が知ってしまったと。

「だからだよな・・・・」

その後、ぴたりと連絡が途絶えたから。

彼女はどういうつもりなんだろうか。
本当に、どういうつもりで・・。

俺は彼女を『恋人』だと思っていたけれど、彼女にとって俺は何だったのか。
どちらが『恋人』で、どちらが『浮気相手』だったのか。

家に向かう帰り道、考えていると段々イラついてくるのが分かった。
気持ちが抑えきれなくなる。

元々、器用に感情を切り替えられるタイプじゃない。
こうなるのが分かっているから、それが嫌だから、できるだけ考えないようにしていたはずなのに。

「はぁー・・・・」

夜空を見上げる。

帰って、少し飲むか。
まだ氷も残っていた気がする。



「祐一郎」



えっ。

マンションのすぐ手前で、彼女が俺を呼んだ。

なんでだ?
どうしてここに?

「こんなところで・・何をしているんだ?」

冷ややかな声が出る。
ダメだと思っても、止められない。

「何って・・」

彼女の困惑した声。

「・・俺に用なんて、無いだろ」

これ以上話したら、抑えきれない。
頼むから・・帰ってくれ。


「用が無ければ、来ちゃいけない?」


「何言って・・」


「ずっと忙しそうだったから連絡しなかったけど、会いに来るのもいけなかった?」


「・・勝手に・・・・すればいい」


俺は彼女に構わず、マンションに入った。



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