（改稿版）小児科医の恋愛事情 ～ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ～

家に入ってすぐ、氷も入れずにグラスにウイスキーを注ぎ、ベランダに出た。

もう１０月も終わりに差し掛かり、上着無しでは寒いくらいだ。

カラカラ･･。
後ろから、リビングの窓が開く音がする。

横に並んだ彼女も、ウイスキーの入ったグラスを手にしていた。

特に言葉を交わすわけでもなく、お互いに遠くを見ながら静かにウイスキーを流し込む。
気づくと、ふたりともグラスが空になっていた。


「もう少し･･飲む？」

「･･ん」


こちらを向いた彼女の顔が、月明かりに照らされる。

綺麗だ。
頬に触れたい。
キスしたい。

衝動が抑えられず、左手にグラスを持ったまま右腕で彼女を抱き、唇を塞ぐ。
外気にさらされていたからか、ひんやりとしていた。


「･･んっ･･」
「･･はぁ･･」


舌が絡む深いキスに、ふたりの声が漏れる。
もっと、もっと、もっとしたい。

どうしてだ･･。
触れたくてどうしようもない。

怒っていたんじゃないのか？
呆れていたんじゃないのか？

ふざけるなって、思っていた。
それなのに･･。


「茉祐････抱いてもいい？」


口から出たのは、驚くほどの本音。

抱きたい。
めちゃくちゃに抱きたい。
ふたりで、溶けてしまいたい。

腕の中で頷いた彼女の手を引き、ベランダからリビングに入る

寝室に行くのさえ惜しくて、すぐに彼女の首筋に唇を這わせていく。

「･･ぁ･･ぁっ･･」

彼女の控えめな声が、俺に火をつける。

言い表せずにいた胸の中の感情が、燃えるような嫉妬だということを思い知った。

誰よりも、俺が彼女を･･。