(改稿版)小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
眠ってしまった彼女を抱き上げ、ベッドに移す。
ぴくりとも動かず、静かな寝息だけが聞こえている。

寝ちゃったか・・。
さすがにしつこかったかな。

苦笑しつつ、どこかでホッとしていた。
あの男について、何をどう聞けばいいのか分からずにいたし、少なくとも、抱いている最中に男の影を見ることもなかったから。


「はー・・・・」

俺もベッドに転がり、目を閉じる。
これから、どうしようか。


「茉祐・・あいつ・・本当に誰なんだよ・・・・」


いつのまにか、俺も眠り落ちていたらしい。
気づいた時にはもう空が明るくなっていて、手を伸ばした先に彼女はいなかった。

帰ったのか・・。

のろのろと起き上がり、リビングに移動した。
ダイニングテーブルの上に、おにぎりがふたつ乗った皿とメモ書きが置いてある。

『もしよかったら、朝ご飯に食べてください』

どんな想いで、昨日このマンションまで来て。
どんな想いで、昨夜俺に抱かれて。
どんな想いで、今朝は目を覚ましたんだろう。

そして。
どんな想いで、彼女は今朝この部屋を出ていったんだろうか。

考えたところで、いまの俺には何もわからない。

置かれたおにぎりをひとつだけ食べてから、ゆっくりシャワーを浴びる。

俺は、どうしたいんだ。

あの男について聞くこともせずに、ただ自分を閉ざして彼女と距離を置いた。
これまでを思えば、あまりにも冷たい態度だ。

それでも、彼女は会いに来てくれて。
俺は、彼女をめちゃくちゃに抱いた。
自分の疑問をぶつけるように。
そこから、答えを見つけ出すために。

自分のため、だけに。

ひどくないか、俺。
ひどいな・・。

ふと給湯パネルに視線を向けると、出勤時間が迫っている。

「ヤバっ」

慌てて身支度を整え、家を出た。



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