(改稿版)小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
今はただ、彼女を落ち着かせたくてそっと背中をさする。

「・・今度から、具合が悪くなったら必ず連絡して。仕事中でも、休憩時間に少しだけ見に来たりもできるから」

「うん・・そうする」

涙は、おさまっただろうか。
肩の震えが止まった気がする。

その時、ゆらりと視界が揺れた。
彼女の様子が落ち着いたことで、大翔と飲んだウイスキーが一気に回ってきたようだ。

「茉祐・・ごめん。俺、なんか眠くなってきた・・。さっきまで、大翔と飲んでて・・。茉祐、大丈夫かな・・」

「えっ。祐一郎、明日は? 仕事?」

「明日は、休み・・」


そこから先は、あまり覚えていない。
彼女と何か話したような、そのまま寝てしまったような。

覚えていないけれど、久しぶりに彼女が俺の元に戻ったようで嬉しかった。

違うな。
俺が彼女の元に戻ったのか。

俺、逃げてた。

あの男のことを、彼女の口から聞くのが怖かった。
俺じゃなく、あの男がいいと彼女に言われるのが怖かった。

あの男だけじゃない。
大翔だってそうだ。
俺の知らない彼女のことを、たくさん知っている。


俺は、茉祐が好きだよ。
茉祐が感じているよりもずっと、茉祐が好きだ。

ねぇ、俺を選んでよ・・茉祐。
もっともっと、茉祐を大事にするから。

茉祐は、俺じゃダメかな・・。
こんなふうに、嫉妬ばかりしている心の狭い男じゃダメかな・・。

俺は、いつだって茉祐にいてほしい。
いつも、俺のそばで笑っていて・・茉祐。



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