(改稿版)小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
もう、ひとりで辛い思いをさせたくなかった。
それが寂しさでも、身体の痛みでも、仕事の辛さでも・・だ。

そう言いつつ、癒されてるのは俺の方なのだ。

早く家に帰りたいと思うようになった。
家に帰れば、彼女がいるのだと。

当然、お互いに仕事をしているし、時間が合わないこともあれば、家にいたとしてもずっと一緒というわけにはいかない。

それでも、お互いに帰ってくる場所がここで、声をかければ、手を伸ばせば届く安心感は想像以上だ。

「寝るかな・・」

風呂に入り、キリのいいところまで本を読み進めたこともあり、そろそろ寝ようとしていたところで寝室のドアが静かに開いた。

「祐一郎・・」

「んー、どうした?」

ベッドに寄りかかっていた俺に、彼女が前から抱きついてくる。

「茉祐?」

「ちょっと充電・・今日、なんだか進みが悪くて・・」

「だったら・・思い切って寝る? 俺、明日の朝早いから5時半に起きる予定。その時間に起こそうか?」

「ん・・じゃあ、そうする。歯磨きしてくる」

さすがに毎晩同じことを言い続けてきた効果なのか、こんなふうに頼ってくれることが嬉しい。
モゾモゾと、彼女がベッドに潜り込んできた。

「ライト消すよ。おやすみ、茉祐」

「・・うん」

「どうした・・・・眠れそうにない?」

きゅっと俺のパジャマの裾を軽くつかむ。
これは、不安な時の彼女の合図だ。

不安の原因は、何だろうか。

「茉祐、もっとこっち来て」

彼女を近づけて、苦しくないように緩く抱きしめた。
こうすれば、安心して眠くなるだろうと思って。

「・・祐一郎とベッドで一緒に寝てると、思い出すことがあるんだ・・」

「えー?」

「あれ・・寝言だったのかな。ハルと飲んだ夜にうちに来て、酔いが回った~って・・」

「俺、何か変なこと言ってた?」

これといった覚えがなかった俺は、何の気なしに聞いてみる。

「俺を選んでよ・・って言ったの。もっと大事にするから・・って」



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