(改稿版)小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
それって・・。

「茉祐が感じているよりもずっと、茉祐が好きだ・・って。俺を選んでよ・・って」

確かに、そんなことを考えていたのは覚えている。
まさか、それを口にしていたとは。

でもあの時は、『嫉妬ばかりしている心の狭い男じゃダメか』とも考えていたはずで・・。
それは言わなかったんだろうか。

「すごく嬉しかった。
私、初めて会った日から心配してもらうことの方が多くて、本当に私でいいのかな・・って全然自信が無かったから」

「茉祐・・」

「それなのに『俺を選んでよ』って言われて・・。祐一郎も、私のことで迷ったり悩んだりするんだって思ったら、なんていうのかな・・そんな祐一郎のこともすごく好きになって。もっと一緒にいられたらいいなって、考えるようになった」

そうだったんだ・・。
だからその次の日、お互いのわだかまりのようなものが溶けたんだ。

だとしたら。
あとは俺の問題だ。

国際会議が終わったら絶対に聞こう。
あの男のことを。

いま聞いてしまいたいとも思ったけれど、場合によっては彼女を混乱させてしまう。
仕事に影響が出てはいけない。

優しさなのか、単なる先延ばしなのか。
そこは、ひとまず考えないようにしよう。

「茉祐・・」

俺は、彼女を抱きしめている腕に力を込めた。
彼女が、俺を見上げる。

「・・祐一郎?」

「俺、本当に、もっともっと茉祐を大事にするから」

「うん・・」

「だから・・・・俺を選んで・・」

どうしてももう一度言いたくなって、彼女を腕に抱いたまま伝えた。

あの男じゃなく、大翔じゃなく、俺を選んで。
その本心は、口にできなかったけれど。

「そんな・・選ぶだなんて・・」

「茉祐?」

「このシチュエーションで、そんなこと・・言われたら・・」

「言われたら・・何・・?」

彼女の両腕が、俺の首に回る。
あまりにも近い距離に、どちらからともなく目を閉じる。
閉じ終えたのが先か、唇が重なったのが先か。



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