過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜
早朝。

廊下から聞こえる足音や声の気配が、少しずつ増えてくる。
ナースステーションが動き出しているのだと、雪乃はぼんやりとした意識のなかで感じ取った。

じんわりとした火照りが、全身を包んでいる。
額に触れなくても、体の中が熱を持っているのがわかる。
「きっと……熱、上がってるな」
そう思いながら、ゆっくりとまばたきを繰り返す。

喉の奥がかさついて、時折、乾いた咳がこぼれる。
「また風邪……? 入院、長引かなきゃいいけど」
言葉には出さず、心のなかで呟いた。

目を閉じると、胸の奥で、ずしりと重く響く拍動が押し寄せてくる。
ひとつひとつの鼓動が、自分の存在を確認してくるようで、苦しかった。

いつものようにやり過ごそうと、ゆっくりと布団を頭まで引き上げる。
光と音と、現実のすべてを遮断するようにして、深く息を吐いた。

布団の中は少し蒸していて、それでも、どこか安心する。
体をぎゅっと丸めて、雪乃はその場にじっと身を沈めた。
早く朝が過ぎてほしかった。
また神崎が来てくれる、その時間だけが、今の彼女の救いだった。
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