主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜
***

私は礼拝堂の窓辺に佇みながら、庭園にいる二人の子供――アルビオンと、あの紫の髪の少女――を見つめていた。

(……確か、名はラエティティアと言ったか)

風に揺れる彼女の髪。その背中越しに見える佇まいには、不思議と目を引かれるものがあった。気品があり、孤独があり、そしてどこか懐かしさすら感じさせる。

(あの年頃にしては、静かすぎる。まるで……多くのものを諦めた者のように)

アルビオンの隣に並んで座る姿は、どこか自然で、まるで長い年月を共にしてきたかのような一体感すらあった。

(似ている……何かが。だが、何に?)

思考の奥にひっかかりが残る。それが何なのか、指先に触れかけて、しかし霧の中に溶けてしまうような感覚だった。

私はゆっくりと目を閉じ、背を向ける。

(それでも、アルビオンが自ら誰かの隣に座るなんて……珍しいな)

あの子が心を許す相手は極めて限られている。いや、今までは皆無に等しかった。だからこそ、その事実が胸のどこかを静かに揺らした。

(……あの少女、ただ者ではないな)

だが、それが何を意味するのか、私にはまだ分からない。

ただ、胸の奥に小さな違和感――いや、期待にも似た感情が、確かに芽吹いていた。

そしてその感覚が、かつて失ったはずの何かへと続いているような気がして、私は風の中に目を細めた。

(何かの因果が、静かに交差しようとしているのかもしれないな)

私は踵を返し、静かに礼拝堂を後にした。

すべてが明らかになるその日まで、彼女の名を、心のどこかに刻みつけるように。
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