主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜

第三章

深紫のカーテン越しに、優しい朝の光が差し込む中、私は目を覚ました。

窓の外の庭園には、昨晩の雨で濡れたバラの花が咲いている。
お母様の好きだった品種。

今日が何の日か、私はよく知っていた。
母の死を悼むには、あまりにも早すぎる――そう思っていた。
それでも、生きている限り、人は歳を取っていく。

今日、私は八歳になる。

誰にも祝われない。
そう思っていた。だが、扉をノックする音が響いた。

「おはよう、ラティ!」

振り向くとそこにはディアが笑顔で立っていた。彼女の後ろには、少し背の高いミネルヴァが控えている。

「着替えて。今日は貴方のための日よ」
「……え?」

戸惑う私に、ミネルヴァがふっと微笑む。

「フォルトゥナ様の葬儀が終わって、皆が悲しみに沈んでる。でもね……それでも、貴方が生まれた日は、祝うべきなのよ」

私は着替えを済ませ、ディアとミネルヴァに手を引かれ、庭園の一角へと案内された。

小さな丸テーブルが用意され、白い布の上に、焼き菓子と果物が並べられている。
花々に囲まれた空間は、静かで温かい。

誕生日の飾り付けは、控えめながらも優しく、祝福の香りに満ちていた。

私は、まだ信じられないような面持ちで花冠を手にしていた。
薄紫の花で編まれたそれは、ミネルヴァが自ら摘み、ディアが編んだものだった。

「ラティ、今日は、貴方が生まれてきてくれた日。哀しみに縛られるだけの日じゃないわ! さあ笑って!」

ディアの言葉に頷きながらも、私はまだ少し不安だった。
< 50 / 89 >

この作品をシェア

pagetop