主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜
不慣れな手つきでポットを持ち上げる私の横から、ミネルヴァがそっと手を添えてくれる。

「カップに近づけて注ぐとこぼれにくいわ。そう、上手よ」
「ありがとう、ミネルヴァ」

ディアがタルトを三等分に切り分けながら、くすっと笑った。

「なんだか、いいわね。こうやって三人でいるの」
「そうね。お行儀を気にせずに、好きなように話せるのって、久しぶり」

ミネルヴァはカップを手に取りながら続ける。

「私は弟の世話ばかりだったから、女の子同士でお茶会なんて憧れてたの。貴族の社交って、何かと形式ばっかりでしょ?」
「分かるわ!それに、どこかで気を張ってないと、誰が何を言ってくるか分からないのよね」

ディアの言葉に、ミネルヴァが同意するように目を細めた。

「でも、今は違う。ここでは、全部抜きにしていいのよ。ね、ラティ」

一瞬だけ言葉に詰まったが、私は頷いた。

「……うん。肩の力、少し抜けた気がする。なんだか……こんな時間があっても、いいのねって」

三人の間にふわりと沈黙が落ちた。けれど、それは居心地の悪いものではなく、むしろ心がゆるやかにほどけていくような――優しい沈黙だった。

「じゃあ、せっかくだし、誰が一番“お行儀悪く”お菓子食べられるか勝負しましょうか?」

ミネルヴァがにやりと冗談を言うと、ディアが吹き出した。

「それ、私負けない自信あるわよ!」

ディアのその言葉に、私も小さく笑った。

「二人とも、本当におかしいわ」

タルトの甘さが口の中に広がっていく。

それ以上に――心に広がっていくのは、確かな温度を持った、友情のはじまりだった。
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