呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!

2. 新しい魔塔主

 ラシェルが皇宮を出てから6年の月日が流れた。初めの1年は魔塔主領へ行く為、旅費を稼ぎながらの旅に費やし、その後の5年間は今いるここ、魔塔の薬草栽培士として働いている。
 
 皇帝が最後、ラシェルに渡した物は魔晶石だった。多くの道具は魔力を動力源として動いたり効果を発揮するので、魔力を持たないラシェルには魔晶石が必須。魔晶石は主に水晶と言った鉱物に魔力を込めたもので、魔力が極端に少ない人や魔力無しの人が持ち歩いて使う。

 旅立つ娘へのプレゼントが魔晶石とはね。
 
 ラシェルは当時を思い出して苦笑いした。 
 当面の生活費を持たせるのでもなく、思い入れのある品を渡すのでもなく、たった一つ魔晶石をくれただけ。
 皇女であることがバレてしまわないようにと、ラシェルの持ち物全てが取り上げられ、持っていた数少ないドレスや装飾品、小物などの類も置いて行かねばならなかった。
 流石に丸裸という訳にはいかないので、庶民が着るような服は貰えたことは幸いだったけれど。
 父は魔力無しの自分をとことん嫌っていたのだと思うと、生まれ育った皇宮を去るのは寂しくなく、むしろスッキリしたくらいだった。
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