こちら元町診療所
「浜ちゃ?どうしたの?」
『靖子さん、すみません‥‥。
 課長に頼まれた急ぎの仕事があった
 のに忘れてしまってたんです。』


はぁ!?課長だって!?

義理兄でもある課長をギロっと睨むと、
驚いた顔をして唾をゴクリと飲み込む
のを感じ取る


急ぎの仕事なんて口実で
どうせ課長が忘れてたんでしょうに‥


「はぁ‥分かった。‥うん、大丈夫よ。
 部長!私が行きます。叶先生、
 お待たせしてすみません。」


溜め息混じりに2人の元へ行き、真新しい白衣を手に持つ先生に頭を下げた。


『忙しいのにありがとうございます。』

「いえ‥これが私の仕事ですから。」

『‥‥‥』


ん?何か気に障ったのだろうか?

ジッと私を見つめる瞳に笑顔を返す
ものの、何処か不思議そうな顔をして
いる。


『中原君じゃああとは頼んだよ。
 案内と、看護師チームへの
 挨拶が終わったら診察室で業務
 内容やパソコンでの診察のやり方
 などを一通り説明して欲しい。』


はぁ?
そんな大事な話を事務員にさせるの?
それこそ部長や課長の仕事でしょ!?


いつもなら言い返すところだが、
これ以上このイケメンな先生をお待たせ
するわけにはいかない


「で、では、順番に診療所内を案内
 させていただきますね。」


ガラッ

「失礼します。月曜日から赴任される
 叶先生が見えましたので入ります。」


「先生、ここが処置室‥」
『『えっ!?嘘‥キャーーー!!』』


ビクッ


な、な、なに!!?何事!?
突然の奇声混じりの叫び声に、思わず
よろけそうになったところを先生が
後ろから支えて下さった


『ちょっと、ヤダ‥私ったらこんな
 ボサボサなのに』
『メイク崩れてないかしら?』
『どうしよう、素敵すぎる』

「‥‥‥‥」


竹原看護師長をはじめ、看護師2人と
ケアスタッフ2名が頬を赤らめ、視線の先が私の後ろの相手だと気付き、慌てて
離れた。


『師長のた、竹原です。
 先生を1番にサポートします!!』


『フッ‥叶です。至らない点が多いかと
 思いますが頼りにしてます。こんな
 素敵な皆さんと働けるなんて楽しみ
 です。』


ヴッ‥‥‥


まるでライトアップでもされているかの
ような眩いオーラに、看護師長達は
ノックアウトされたのか全員固まった
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