こちら元町診療所
『中原さん、行こうか。』

「えっ?あ!は、はい。では診察室は
 最後にして診療所内を案内します。」

肩に置かれた手に我にかえると、石化の如く固まる師長達をそのままにして処置室を出た。

あんなにテンションが高い
看護師達を見たのは初めてかもしれない
から来週から大丈夫かだろうか?


検査室、放射線科、リハビリ、食堂、会議室など一通り案内を終え診察室に
戻って来たら、処置室にいるはずの
看護師達が何故か診察室にいて掃除など
をみんなで手分けして行っている


あれから何処に行っても出会う人に
キャーキャー言われ、その度に私は
驚くしかなかったけど、先生はどの人
にも同じように丁寧に接していた


良い人なんだろうけど、言い方は悪い
が胡散臭い笑顔に思えてしまう


「あの‥‥システムの説明したいので、
 すみませんが席を外してもらえたら
 ありがたいです。」


居てもらっても構わないけれど、
なにせこの狭い診察室が人で溢れて
いると先生が集中出来ないかなと
思えたのだ。


キラキラしたアイドルでも見るかのような皆さんの表情が落ち込むのを感じつつ
も、苦笑いを浮かべて頭を下げる


月曜日から思う存分見れますから‥。


「先生、一旦休憩を入れますか?」


静かになった診察室でパソコンと
電子カルテに電源を入れると、
部屋の窓を幾つか少しだけ換気のために開けた。


1時間ほど歩き回ったとはいえ、
慣れない場所で先生も疲れてる
かもしれない‥‥


『中原さんは?』

「えっ?私ですか?私は
 仕事が残ってるので説明を終えて
 早く持ち場に戻れると正直嬉しい
 です。でも休憩は必要なので全然構い
 ません‥ッ」


ビ‥ビックリした‥‥‥

真後ろに立っているとは思わず、
振り返った先に、私を覗き込むような
体制で立っていた先生との距離が
近すぎたのだ。


本当に男性なのに綺麗な顔立ち‥‥。
こんな人に見つめられたら、そりゃ
みんなみたいに騒ぎたくもなるよね‥。


『フッ‥‥‥君はそういうタイプの
 人だったんだね。』


えっ?
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