こちら元町診療所
人生で初めて来たバスローブの肌触り
はとても上質で、今まで爆睡していたベッドも寝心地が最高だった


昨日の今日で、今すぐ逃げ出したい
気持ちはあるが、待っててと言われた
以上そうするしかない。


服を着替えようにも、いつ入ってくるか
分からないから脱げないし‥困った。


あーーもう‥ほんと何してるんだろ。
もうアラサーなんだからしっかりしろ!


ガチャ


ドキッ


『珈琲飲めるなら飲むと二日酔いに
 少しはいいからね。水は眠る前に
 飲ませたんけど、お酒の飲み方が
 酷かったから今日はツラいかもな。』

「‥あ、ありがとうございます。
 いただきます。」


普通に受け取ったはいいけど、
2人ともバスローブ姿で、ベッドの上で
一緒に珈琲を飲むって普通に考えたら、恋人でもないのにおかしくないか?


無駄に広過ぎる寝室と高層マンション
だろう窓からの景色は一般人には日常
では味わえない空間だ。


医者だもんね‥‥‥。
一般の事務職が、こんなところに
住むことなど今後生きてても訪れる
ことなない場所だ


『靖子は恋人とかいないの?』


「えっ!?ゴホッ!!な、なんですか
 急に‥ゴホッ、ゴホッ。」


色素の薄いキャラメル色の瞳が細められ
私を見てニコラと微笑んでいる


「はぁ‥‥いそうに見えます?
 先生こそいいんですか?何もないと
 してもご自宅に異性を連れ込んで。
 わ、私刺されたくないですからね?」


咽せつつも喉に熱い珈琲を流すと、
先生がトレーにカップを置いた後
そっと私の頬に手を触れさせた


『自宅に異性を入れたのは初めて
 なんだけどな‥‥。』


「ちょっと、触らないでください!
 先生の初めてなんて光栄ですね。」


綺麗な手をパシっと振り払うと、
居心地の悪さに珈琲を飲み干した私は
立ち上がり着替えを手に取った。


忘れかけていたが、気に入ったなんて
ニヤリと笑って言われた事を思い出し、
身の危険を感じたのかもしれない


そうじゃなくても、この人の隣は
眩しくて目が眩みそうなのだ


後日何かしらの形でお礼はするとして、
早いところ退散しよう‥‥


『フッ‥‥シャワー浴びてく?』

ドキッ
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