こちら元町診療所
お弁当は作り置きでなんとかなるし、
朝食は食べてる方だけど、問題は夜だ。
22時近くに帰宅するレセプト期間だけ
ならまだしも、最近は日々の業務が
17時には終わらない。
看護師さんや職員さんはみんな17時には帰宅しているけれど、安月給の事務員
が、こんなにも仕事量が多いなんて
改めて不公平だ‥‥。
『靖子さん、顔色悪いですよ?
大丈夫ですか?』
「平気へいき。元から貧血持ちだし、
明日は休みだからさ。」
あれ?
なんで天井が回転してるんだろう‥‥
『靖子さん!!』
『やっちゃん!!』
課長‥‥?
みんなの遠ざかる声を最後に、段々と
視界が真っ暗になるのだけは分かり、
体に力が入らない私は、そのままそこで
意識を飛ばした。
カタッ
「‥‥‥ん」
あれ‥‥‥ここ‥‥‥何処?
視界に映った真っ白な空間に、ゆっくりと左右を見渡す。
『起きたか?』
「‥‥ッ‥‥叶先生?‥なんで?」
まだ上手く働かない頭で考えながら
起きあがろうとすると、血の気が引く
感覚にもう一度ベッドに寝た。
『貧血おこしてるからまだ寝てて。
血液検査の結果もヘモグロビンの値が
低かったからツラかっただろう?』
貧血‥‥‥
だからあの時、天井が回転したのか‥‥
最近は調子がいいと思ってたから、通院
もしてなかったけど、疲れてるって
言い訳をして食生活もかなり乱れてた
からかもしれない
『もうすぐ点滴が終わるな。
家まで送ってくから安心していい。』
えっ?
「あ、あの‥ッ‥自分で帰れます。
それか、また課長に頼むので。」
起き上がりたいのに目が回りそうで
寝たまま視線だけ先生に向ける。
医師が一事務員を家まで送るなんて、
誰かに見られたら怖すぎる‥‥
ただでさえ私にちょっかいをかける姿を
看護師達に見られて気になってるのだ
『みんなはもう帰っただろう?
ついでだから気にしないでいい。
それに‥‥』
点滴を調整し終えた先生が、椅子に
腰掛けると、私の腕を軽く握った。
『少し痩せすぎだ‥‥。俺のせいで
忙しくなってしまったのが申し訳
なくなるな。すまない‥‥。』
叶先生‥‥‥
綺麗な顔立ちは相変わらずだけど、
その表情が悲しそうに見えて、それ以上
何も言えなくなってしまう‥‥。
確かに叶先生が来てから元町診療所は
以前の姿とは全く変わってしまった。
朝食は食べてる方だけど、問題は夜だ。
22時近くに帰宅するレセプト期間だけ
ならまだしも、最近は日々の業務が
17時には終わらない。
看護師さんや職員さんはみんな17時には帰宅しているけれど、安月給の事務員
が、こんなにも仕事量が多いなんて
改めて不公平だ‥‥。
『靖子さん、顔色悪いですよ?
大丈夫ですか?』
「平気へいき。元から貧血持ちだし、
明日は休みだからさ。」
あれ?
なんで天井が回転してるんだろう‥‥
『靖子さん!!』
『やっちゃん!!』
課長‥‥?
みんなの遠ざかる声を最後に、段々と
視界が真っ暗になるのだけは分かり、
体に力が入らない私は、そのままそこで
意識を飛ばした。
カタッ
「‥‥‥ん」
あれ‥‥‥ここ‥‥‥何処?
視界に映った真っ白な空間に、ゆっくりと左右を見渡す。
『起きたか?』
「‥‥ッ‥‥叶先生?‥なんで?」
まだ上手く働かない頭で考えながら
起きあがろうとすると、血の気が引く
感覚にもう一度ベッドに寝た。
『貧血おこしてるからまだ寝てて。
血液検査の結果もヘモグロビンの値が
低かったからツラかっただろう?』
貧血‥‥‥
だからあの時、天井が回転したのか‥‥
最近は調子がいいと思ってたから、通院
もしてなかったけど、疲れてるって
言い訳をして食生活もかなり乱れてた
からかもしれない
『もうすぐ点滴が終わるな。
家まで送ってくから安心していい。』
えっ?
「あ、あの‥ッ‥自分で帰れます。
それか、また課長に頼むので。」
起き上がりたいのに目が回りそうで
寝たまま視線だけ先生に向ける。
医師が一事務員を家まで送るなんて、
誰かに見られたら怖すぎる‥‥
ただでさえ私にちょっかいをかける姿を
看護師達に見られて気になってるのだ
『みんなはもう帰っただろう?
ついでだから気にしないでいい。
それに‥‥』
点滴を調整し終えた先生が、椅子に
腰掛けると、私の腕を軽く握った。
『少し痩せすぎだ‥‥。俺のせいで
忙しくなってしまったのが申し訳
なくなるな。すまない‥‥。』
叶先生‥‥‥
綺麗な顔立ちは相変わらずだけど、
その表情が悲しそうに見えて、それ以上
何も言えなくなってしまう‥‥。
確かに叶先生が来てから元町診療所は
以前の姿とは全く変わってしまった。