こちら元町診療所

melt

ピピピピ　ピピピピ　ピピピピ


「‥‥‥ん‥‥」


手探りでスマホを探り当て、
半目でアラームを止めると、起きたくなかったけど、体を起こして思い切り
伸びをした。


昨日、忙しい業務を終えて残業を
している時、医事課に顔を出した
叶先生の隣に伊東先生がいて、
2人が仲良く帰る姿を見た。


いつもは、もっと遅くまで仕事をして
帰るのに、2人でご飯でも食べたの
かな？それとも‥‥‥


色々考えていたらなかなか寝付けず朝を迎えてしまったのだ。


今日が休みで良かった‥‥‥。
でも、火曜日は棗先生、木曜日は伊東先生とこれから顔を合わせることになる。


こんな気持ちをいつまでも抱えたまま
過ごすのは流石にしんどいから、
割り切って働かないとな‥‥‥。


寝付けなかったこともあり、そのまま
二度寝を昼近くまでしてしまい、
目覚ましに熱めのシャワーを浴びた。


ピンポーン


えっ？


誰だろう‥‥‥
宅急便も予定はないし、勧誘かな？


頭をタオルで拭きながら静かに
ドアモニターをチェックしに近寄ると、
そこに映っていた叶先生に驚き、
部屋着だったものの急いで玄関に
向かって鍵を開けた。


先生には洋太のことがあったから、
オートロックの番号を教えてあったけど
、連絡なしで訪ねてきたことなんて
ないのに‥‥‥。


ガチャ


「ッ！どうされさんですか？」


ただそこに立っているだけなのに、
なんとも言えない輝かしいオーラを
放つ相手が、私の姿を上から下まで
見た後溜め息を吐きすぐに家の中に
入ってきた。


『相手を確認してから出ないと
　駄目だろう？それに、そんな格好して
　出たら襲われても文句は言えない。
　もっと危機感を持つべきだよ。』


「‥‥すみません。‥でも、モニターに
　先生が映っていて焦ってしまって。
　お休みの日に突然来られるなんて
　どうかされたんですか？」


コツンとオデコを小突かれ、いつもなら
素直に謝れるのに、胸がモヤモヤして
言い方がキツくなってしまう。


最近忙しくてなかなか会えてなかった
のもあるけれど、それでも今日だけは
会いたくなかったと思えたのだ。



『昨日‥‥置いて帰って悪かった。』


ﾄﾞｸﾝ


‥‥置いて帰って？

まるで荷物でも置いて忘れて帰った
みたいな言い方に聞こえてしまうのは、
私の気持ちに問題があるからだ。


‥‥でも‥そんなこと‥わざわざ
言いに来たのなら来てほしくなかった‥