こちら元町診療所
腕を引かれたかと思えばそのまま
ソファに寝かされると、大志さんが私に馬乗りになった。


『なんで帰るの?俺何か嫌な気分に
 させちゃった?』


「違ッ‥‥お客様が来たからいない方が
 いいかなって‥‥だって‥私が
 居たら迷惑でしょう?」


綺麗な顔が近過ぎて目線を横に背ける
と、さらに近づいてきた大志さんが
私の首筋に顔を埋めた。


『靖子がいて迷惑なんて思う訳ない
 だろう?』

「ッ‥でもお客様が‥‥アッ‥」


ピンポーン


チクッと痛みを感じたものの、そこを
這う舌にまた体が熱を持ち、慌てて
大志さんの胸を押した。


「これ以上はダメです‥冷静で
 いられなくなるから‥‥。」


『‥‥‥フッ‥‥俺に触られると
 冷静じゃなくなるの?』


「そ、そうですよ‥‥ッ‥大志さん
 みたいに余裕なんかないから‥‥
 もうおかしくなりそう‥‥んッ!」


ダメって言ったのにも関わらず落とされた深いキスに抵抗するも、絡めとられる
舌に体の力が入らない。


カットソーの裾から滑り込んできた
少し冷たい手に体が震えながらも、
キスは止まらず、胸の頂に指が触れると
甘い吐息が溢れた。


昨日あんなにしたのに‥‥
どうしよう‥‥‥



『開けるの遅いから入ってきたけど
 ふーん‥‥休日の朝からお盛んな
 ことで。』


‥‥えっ!!!?


唇が塞がれたまま、大志さんの背後から
こちらを覗いていた人物に目が見開き、
大志さんの胸をドンドンと押し、慌てて
乱れた服を直した。


『こんにちは、靖子ちゃん。』

『挨拶しなくていい。どうやって
 入ってきた。場合によっては警察
 を呼ぶけど。』

「ッ‥‥‥」


私にブランケットをすぐにかけて
くれた大志さんが私を背にその相手に
低い声でそう伝えると、一瞬静かに
なったものの、すぐにクスクスと
笑い声が聞こえてきた。


人の家に勝手に入ってきて、この状況で
笑えるなんて‥おかしいとしか思えない


棗先生の叶先生に対する思いを
知ってるけれど、好きという感情
よりも執着心に似た感情を抱いてしまう


『なんか大志変わったよね‥‥。
 大学病院にいた頃交わした約束を
 忘れた訳じゃないよね?』


約束‥‥?


『おばさまからも連れ戻すように
 言われてる。いい加減戻って来い。
 櫻子も待ってる。』
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