それでも、あなたを愛してる。【終】
序章☪ 本物
「早く出ていって」
─18歳の終わり。
高校を卒業して、婚約者と結婚する予定だった依月は前触れもなく現れた“本物”にそう言われた。
「……わかりました」
この家で、味方なんて居ない。
それは元からだったし、今更傷つかない。
高校卒業したらすぐ結婚する予定だった婚約者と、両親が話し合っていたことは知っていたが、その後、何故か伸びた結婚のタイミング。
婚約者から手紙やメールが届いたとかでもなく、両親から告げられた言葉に、依月は傷つく気力もなく、ただ頷いただけだった。
婚約者とはここ数ヶ月、連絡が取れない。
高校も家が送り迎えをすることが当たり前で、卒業式も出席出来ていない。
─嗚呼、でも今思えば、この為か。
「何、その目。孤児の分際で!」
頬を叩かれて尚、誰も助けてくれない。
嘲笑うようにこちらを見て、依月を叩いた“本物”の手のひらを心配している。
「……長い間、お世話になりました」
何も期待なんてしていなかった。
どうでも良かった。
この家族に何かを期待することは無駄だと分かっていたし、もう、どうでも良かった。
(これから、どうしようかな)
真っ暗な夜空。視界に映る、白い息。
冷え切った外は、依月の心と同じ。
静かで、何も見えなくて、叩かれた頬は鈍い痛みを保ったまま、依月は。
「彼に、会えなくなるのは嫌だなぁ......っ」
歪む視界に、映る月。
行き場をなくした依月はひとり、その場で崩れ落ちた。