それでも、あなたを愛してる。【終】
─【運命の調律者】として、狂わせたもの。
それは当たり前に、歴史だ。
人や書物が記録している年齢から大幅に外れ、多くの書類に不備を生み出す。
中途半端に人間じゃない悠生はいくら時空を超えても、特に大きな代償はないが、その代わり、この世界で生きる全ての人々に等しく、その代償は微々たる形で請求される。
例えば、5分寝坊をするとか、目覚ましより早く起きるとか、気付けば、1日があっという間とか、レポートの提出に数秒の差で間に合わなかったとか。
そういう微々たるもののズレは積み重なると、大きくなっていく。
それでもよく考えないと、気づかないことだけ。
─時空を超えるということは、無償では済まない。
だからこそ、微々たる代償を受ける世界中の人達の中では比較的、悠生は結果として、多めに代償を払うことになっている。
中途半端な存在で、特に大きな代償はなくても。
世界中に課された微々たる代償を払うものとしては、少し多めに。
それはある意味、悠生の覚悟でもあった。
まさか、その判断がここまで大きな実年齢との差を生み出すとは思わなかった。
でもまあ、そこら辺は他力本願にはなるが、本来の時間軸から外れた存在である悠生が、この世界に居続けることで起こるだろう不具合は、他の神様がどうにかしてくれるだろうと思っている。
確かにあった歴史を、想いを、思うままに歪められる能力─……それを、如何様に生かすのか。
ぎゅうっ、と、彩蝶を抱き締めて、依月達の方を見ると、ふたりは身を寄せ合いながら、悠生の記憶を眺め続けて、何か話している。
その一方で、逃げようとした下手人たちは警備に捕らえられ、合図を貰った彩蝶は涙を拭うと、深呼吸をして、当主の顔になった。
「─ここに、全ての契約の破棄を認める」
彩蝶がそう言いながら、夜霧が姿を隠して、不正入手してきたという物を燃やした。
─契約の控えである。