それでも、あなたを愛してる。【終】



「っ、なぜこれがっ!どうしてくださるのか!」

「ちょっと!それ、大切に仕舞ってたんじゃないの!私、知らないわ!」

「俺達も関係ねぇぞ!!!」

そう言って、バタバタと逃げていく度、警備員に回収されていく彼ら。

魂に刻まれる契約のその紙は、燃えるのに大変な時間がかかる。
破いたりすると、その契約をかけられた人の精神状態がおかしくなる為、四ノ宮家の当主は、四季の家の契約書を処分する時、慎重に燃やすように教えられる。

─そもそも、契約とは何か。

本当に様々な説があって、それは生み出した創世神本人すらも絡繰はよくわからないという。

創世神よりも古い記憶を持つ神様はいないので、本当に契約の生まれた経緯は謎だ。

しかし、その契約は四季の家が産まれた時からずっと、深く深く根付いているもの。

言葉にすれば、『人の口に戸は立てられない』を物理的に実現するということ。

例えば、『今見た全てを他言するな。忘れろ』とした場合、その契約がある限り、声は声にならない。だから、依月の本当の両親を知る人々は周囲に沢山いたけれど、依月にそれを伝えることは出来なかった。

筆談を用いたとしても、まるで書く寸前に主導権を取られたかのようなミミズ文字になり、何かを伝えることは出来なくなるから、その契約の力は本当に強い。

契約には大まかに種類があるが、四季の家の人間で、その血筋であれば、誰もが【主】となり、契約を結ぶことが出来る。

氷見は氷室家を滅ぼした際、依月の出生をねじ曲げ、あの夜の真相を事件とし、自分の都合の悪いことはすべて契約を用いて、封じた。

分家の、しかも、分家になり得る能力を持っていない氷見の奴らが作った契約等、宗家が作ったものに比べれば、精度は劣る。

それなのに、宗家の人々はそれを破ることが出来なかった。─それは何故か?



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