それでも、あなたを愛してる。【終】
話をしよう
「……今まで、迷惑をかけて申し訳ありませんでした」
悠生は、面々の前で深く頭を下げた。
近くに座る彩蝶は、そんな彼を心配そうな顔で。
「え、いや、待って?これ、何の集まりなの?」
そんな姉の珍しい様子のせいか、それとも、見知らぬ彼がいきなり謝罪していたからか、いろはは狼狽し、皇の背中に隠れた。
皇はそんないろはを見て笑いながら、
「いろは。彼が“調律者”と呼ばれていた方だよ。そして、依月さんの実のお兄さん─彩蝶さんの元恋人で婚約者で……」
「元じゃない」
─皇の言葉に即座に否定をいれた彩蝶はそう言って、俯いてしまう。
そんな彩蝶の頭をポンポンと撫でながら、
「そうだね。元じゃないね。今度はちゃんと、最期まで大事にするからね」
と、悠生は優しく微笑んだ。
この場に揃うのは、
春の当主代理である橘千景、橘千陽。
夏の当主である朱雀宮契。
秋の当主である桔梗凛、桔梗翠。
冬の当主代理である、柊絢人。
四ノ宮家当主である、四ノ宮彩蝶。
四ノ宮当主妹である、四ノ宮いろは。
そして、四ノ宮家の執事長子息、司宮皇。
あとは、“運命の調律者”刹那─氷室悠生。
創世神の転生者、ユエ
創世神の伴侶の転生者、ティエ(アマネ)
朝の半神、朝霧
夜の半神、夜霧
─なお、この場に氷室悠生の妹であり、朱雀宮契の婚約者でもあるはずの、氷室依月は現れず。
「─初めまして、としておく。ユエだ」
「初めまして、創世神様。複雑な物事が絡み合ったとはいえ、失礼な対応を、此度は失礼致しました。つきましてはユエ様が宜しければですが、私の空間にいつでも御案内しますので─……」
ユエは調律者のめちゃくちゃな行動に、一概に調律者を責められないが、それでも…と、腹を立てていたが、悠生があまりにも人格者だったからだろう。
「元々人間で、生まれつき神力も強く、柊家直系血筋の息子……んで、その心臓には、かつての俺の一部……」
気付けば、悠生が人間界で彩蝶と生きていけるよう、考え始めていた。
「─ユエがちょろいのか、悠生がすごいのか、どっちだ?」
契が彩蝶に訊ねると、
「悠生が凄いんだと思う。私、数年間の悠生しか知らないけど、いつだって老若男女関係なく、沢山の人に可愛がられていた気がする」
「老若男女」
「うん。権力とか絡まない限り、本当に相手が最初、どんなに警戒していても、すぐに懐柔しちゃうんだよね。不思議な魅力」
─心から好きなのだろう。愛しているのだろう。
墓の前でボロボロになっていたから、その相手が本当は生きていた、なんて。
「俺、依月に似ているでしょ?」
ユエが考え込んだからか、くすくす笑いながら、悠生は近づいてきた。
「え?」
「契くんの視線が、物語ってるよ。目元、かな。多分、いちばん似てると思う」
そう言って、悠生は彩蝶に触れる。
ふたりの大人びた雰囲気に、顔を覆いながらもガン見するいろはと、それを咎める皇。