それでも、あなたを愛してる。【終】
「……ねぇ、悠生?」
「うん?」
「結局さ、最初から最後まで、何が起こっていたの?貴方は何をしたの」
彩蝶は彼に大切にされながらも、四ノ宮家当主としての役目は決して忘れない。
彼女の強い瞳を受けて、悠生は。
「ん〜どこから説明しようか、悩むんだけどね。多分、全員断片的にしか掴めなくて、掴んだ情報も次から次へと更新されたはずだから、混乱してると思うんだけど─……多分、ある程度ざっくりしたのは、俺が【真偽の裁定者】から頼まれて下した文言で知ってるよね?」
「【真偽の裁定者】が誰かは分からないけど、本当にざっくりは……」
悠生の確認に、凛が表情を曇らせた。
それを見て、悠生は微笑む。
「大丈夫。凛くん、君の行動は間違ってないよ。調律者として保証する」
「でも」
「君のお父様の件もね、ちゃんと理由はあるから。安心してね」
そう言いながら、悠生は紙とペンを取り出した。
「どこから話す?んー……ああ、とりあえず、ユエ様の話からいこうかな」
「悠生、ユエでいい」
「あ、本当ですか?やったぁ」
何故か満足気なユエと、それを優しい目で見るティエ。
「……わかる気がする」
「でしょ」
説明できない魅力を感じていると、彩蝶はクスクスと笑う。そんな空気も察することなく、楽しそうに紙面にペンを滑らせる悠生。
「まず初めにね、創世神であるユエが生まれた。創世神とは言うけど、この世界を生み出したって意味とは少し違っていて、そうだな、四季の家を生み出した存在の大元、という意味かな。四季の家は太古、国の中枢だったから、四季の家の動きがそのまま国全体に影響を及ぼすというか、そういう意味で、世界のはじまり、創世神とされた」
悠生は「言葉の少しの違いが、認識の誤差を起こすんだよね」と笑いながら、紙に書く。
「まぁ、ちらほら人間が見られるようになった時代に産まれたユエは自分の存在をきちんと理解するよりも先に、人間に利用されかけて、閉じ込められていたと聞いたけど」
「……言われてみれば、そうかもな。国の預言者として扱われて、百余年くらい生きた記憶がある。でも、ずっと少年の姿から変われなかったから、次第に化け物だと言われるようになって、また産まれた土地に戻ったら、ずっと人に囲まれていたからか寂しくて」
ここで、違和感を覚えた凛が口を出した。
「待って。でも、最初、皇の口から伝えられた調律者からのメッセージは、『ユエが創世神として、世界の理を創り出した』だったはず」
「ああ。そうそう。それね、あまりにもユエが人間臭くなってきたから、呆れた裁定者が順序を逆転させたというか……ユエが光と闇を、天地を、朝と夜を、四季を創り出したこと自体はなかったことには出来ないけど、置き換えることは出来るからね」
「置き換える……?」
「そう。そうやって変えられた歴史なんて、かなりあるよ。ちょっとした誤差で変わってしまうから、時の泉を使用すると、どんな人間でも代償が伴う」
「事実は変えられないのに、どうやって置き換えるの?そもそも、今の真実は?」
彩蝶もあまり理解が追いつかないようで、目を瞬かせる。