それでも、あなたを愛してる。【終】
「なあに、契。呼んだでしょう?」
「うん、目で」
「目で呼ばれた〜」
ニコニコ笑うティエに契がざっくりと、悠生のこれからについて尋ねると、
「んー、それは悠生次第だよ。心臓に封じ込めた悪神が長時間こっちに悠生がいることでどう作用するかも分からないくらい、悠生は向こう側に馴染んでる。だからこそ、二度と真っ当な人間には戻れないと言っているし、多分、寿命も人より長い。ここにいる人間の中で誰よりも……悠生がどこまで耐えれるか、かな。少なくとも、向こう側はめちゃくちゃ広いからね〜悠生が向こうでこれまで通り、見守りながら生活するって言うなら止めないよ。だって、私達はもう、向こう側には行けないから。もう少し神力が満ちたりしたら、行けるかもだけど。意外と人間も楽しいからね、行こうとも思わないし」
「じゃあ、ティエはこれから先も人間界で?」
「う〜ん。向いてない自覚もあるんだよ〜。でもね、私、この身体の子はね、本当は大学に行く年齢らしいんだ。だから、ユエと行くのもありかなって」
「なるほど?」
「その際の手続きはお願い〜」
「勿論です。─結局、悠生の意思次第ってことですね」
「ありがとう〜 うん。そういうこと。でも、それは私達がなにか伝えることじゃない。あの二人の間で答えが出るまで、ゆっくり待ってあげて」
ティエはそう言い切ると、また、ユエの元へ戻っていく。
「守りますね、契」
「ん?」
ティエを見ながら、誓いのように。
「この身を縛っていたクソみたいな契約が破棄されたので、これからはもっと自由に生きてみたいと思います。手始めに、柊家を守ることから」
「それはいいな」
「でも、何から手をつければいいのか分からないこともあって……その時は、相談に乗ってくださいますか」
「勿論。この会を通して、友達になれたと勝手に思っておく。連絡先も交換しておこう。飲みにも行こうな」
「!、ありがとうございます」
嬉しそうな表情。友人付き合いすら上手くいかず、書庫に閉じこもっていた子。
「あー!契が抜け駆けしてる!私とも仲良くしてよ、絢人!」
小声で盛りあがっていたのに、なんて目敏い。
駆け寄ってきた彩蝶にオロオロする絢人を見て、悠生は笑いながら、間に立つ。
「彩蝶、自己紹介。そして、今日の本題を思い出してね」
悠生に振られて、目を瞬かせた彼女は。
「ごめんね!!??」
─やっと思い出したらしく、そう叫んで頭を下げた。そんな彩蝶の行動に、めちゃくちゃ混乱した顔をする絢人を見て、悠生はさらに大笑いした。