それでも、あなたを愛してる。【終】

愛が宿るもの




「─ねぇ、急に呼び出されたと思ったら……何事?」

街中の喫茶店。
目の前でパフェを食べながら、華恋は眉をひそめた。

「……ねぇ、ひとり暮らしって「は?」……」

相談するより早く、挟まる声。

「ひとり暮らしって何。する必要ないでしょ?」

「え、な、なんで」

「契さんがいるじゃん」

「……」

依月は微笑んだ。
『愛してる』と心から伝えられて、満足したはずなのに……色々とわがままが言いたくなっていて、それが怖くて、逃げ続けている現在。

(お兄ちゃん、契達の話し合いに行くって言ってたな─……)

依月は全力で参加を拒否した。
何故なら、絶対に鉢合わせるからである。

「……あんた、逃げてるでしょ」

昨日から一転、物言いに遠慮が無くなった華恋は

「どうして逃げるの!昨日、彼の腕の中にいて、とっても幸せそうだったじゃない」

なんて、第三者から見た自分の姿を告げられて、恥ずかしすぎる。

「え、何?まだそんなに繊細で敏感なの?ある程度、落ち着いたって聞いたけど?」

「落ち着いたよ。落ち着いたはず……少なくとも、街は破壊しないほどには落ちついたって」

「最初が大きすぎて、わからないわ。─それで?ひとり暮らししてどうするの。そもそも、お兄さんは?」

「お兄ちゃんは大好きな人と結婚するか、向こうに帰るかのどっちかだもん」

「今の家は知り合いに借りてるんでしょ?」

「知り合いというか、ここを話すとまた長いんだけど、そうだね。お兄ちゃんの知り合いが、持ちマンションを貸してくれてる」

「家賃は?」

「要らないって言われているけど、そうはいかないから、微々たるものでも払ってるって聞いた。ご飯とかもさ、私達兄妹はもう食べる習慣無さすぎて最初は大変だったけど、最近はちゃんと食べるようにしてるから食費もかかるでしょう?他にも色々と─……仕事しなくちゃ」

「待って待って待って待って?」

指折りで数えていると、全力で華恋に止められてしまった。


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