それでも、あなたを愛してる。【終】
「─契、依月を見つけに行こう」
背中に触れる手。見ると、凛が苦しそうな顔をしていた。
「契がそんな風になるなら、代償とか考えずに、最初からこうするべきだったのかも」
「凛!」
「止めないで、千景。─契、方法はあるんだよ。問題のその日まで、“戻れば良い”んだ」
「“戻る”……?」
「そう」
「凛!」
平然と頷く凛。
一方、凛を止めようとする千景は首を横に振った。
「─“戻って”、全ての根源を消せば良い。誰にもバレることはないよ。実際、これは長く四季の家が続くために繰り返されてきた【大罪】なのだから」
「【大罪】って……」
「俺は今、15歳だけど。実はね、23歳までは生きたことがあるんだよ」
「………………は?」
「両親の悲願を叶える為、翠(スイ)と共に生きる為、俺は死ぬ気で“繰り返した”」
……凛が、何を言っているのか分からない。
「繰り返し続けて、精神が擦り切れそうになりながら、俺は何度も何度も何度も何度も繰り返して、その果てで必ず、翠は死んだ。そして、紫苑も死んで、柊家は永遠に失われた」
「……」
「それを認めるわけにもいかないだろう。少なくとも、俺達を生み出した根源たる神とやらは」
本当に何を言ってるんだ。
そんなスピリチュアルの力があるのか。
─神とか、そんなもの。
いないとは言わない。言えば、自らの存在を否定することになるから。でも、そんな。
「本来の流れを、変に歪ませようとする馬鹿が、いつの時代もいるものだ。例えばそう、本来ならば、行方不明になるはずがない本物が行方不明になって、今になって現れたこととか」
凛はずっと、大人びていた。
幼い頃から苦労してきたからだろうとか、そうやって思い込んでいたけど。
「契が望むなら、俺はもう一度、その運命に身を投じるよ。きっと、翠も許してくれる」
翠は、凛の最愛の婚約者だ。
小学校を卒業したあたりで婚約を結んだ二人に、周囲の大人が色々と言っていたことを覚えてる。
凛はそれに対して、『遅すぎるくらいだ』と言っていたが、それは冗談なんかじゃなく─……。