それでも、あなたを愛してる。【終】



「─契、依月を見つけに行こう」

背中に触れる手。見ると、凛が苦しそうな顔をしていた。

「契がそんな風になるなら、代償とか考えずに、最初からこうするべきだったのかも」

「凛!」

「止めないで、千景。─契、方法はあるんだよ。問題のその日まで、“戻れば良い”んだ」

「“戻る”……?」

「そう」

「凛!」

平然と頷く凛。
一方、凛を止めようとする千景は首を横に振った。

「─“戻って”、全ての根源を消せば良い。誰にもバレることはないよ。実際、これは長く四季の家が続くために繰り返されてきた【大罪】なのだから」

「【大罪】って……」

「俺は今、15歳だけど。実はね、23歳までは生きたことがあるんだよ」

「………………は?」

「両親の悲願を叶える為、翠(スイ)と共に生きる為、俺は死ぬ気で“繰り返した”」

……凛が、何を言っているのか分からない。

「繰り返し続けて、精神が擦り切れそうになりながら、俺は何度も何度も何度も何度も繰り返して、その果てで必ず、翠は死んだ。そして、紫苑も死んで、柊家は永遠に失われた」

「……」

「それを認めるわけにもいかないだろう。少なくとも、俺達を生み出した根源たる神とやらは」

本当に何を言ってるんだ。
そんなスピリチュアルの力があるのか。
─神とか、そんなもの。
いないとは言わない。言えば、自らの存在を否定することになるから。でも、そんな。

「本来の流れを、変に歪ませようとする馬鹿が、いつの時代もいるものだ。例えばそう、本来ならば、行方不明になるはずがない本物が行方不明になって、今になって現れたこととか」

凛はずっと、大人びていた。
幼い頃から苦労してきたからだろうとか、そうやって思い込んでいたけど。

「契が望むなら、俺はもう一度、その運命に身を投じるよ。きっと、翠も許してくれる」

翠は、凛の最愛の婚約者だ。
小学校を卒業したあたりで婚約を結んだ二人に、周囲の大人が色々と言っていたことを覚えてる。

凛はそれに対して、『遅すぎるくらいだ』と言っていたが、それは冗談なんかじゃなく─……。


< 18 / 186 >

この作品をシェア

pagetop